その他×陽子

□主上
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「あっ」

しまった、と思う間もなくパサリと結っていた紐が落ち、髪が解けた。

柔らかに波をうつ藍色の髪。


「わぁ。祥瓊、髪おろしてるのか」

振り向けば相変わらず官服姿の主が立っていた。

「おろしてるんじゃないわよ、解けてしまったの!」天然パーマは大変なんだから!
湿気に弱いし!
ブツブツ愚痴れば。

「そうか?」
長い手が髪に延びて、優しく触れる。

「綺麗だ」

そう言って微笑んだ陽子の方が間違い無く美しい。

「全く…」
相変わらず女たらしなんだから…
溜め息と共に一人ごちる。

「ん?」

「何でもないわよ」
しかも自覚症状無し。
密かに思いをよせる女官がどれだけ多い事か。


「あ、そうだ。さっき延王から鸞が来て、雁にお招きいただいたんだ。」

「そう、じゃあ色々準備が必要ね」
言えば、こくりと頷いた。
「非公式にだからそんなに大事にはならないと思うけど。桜を見せて頂けるらしい。」

「桜?」

「うん。ほら、前に話した蓬莱の花。凄く綺麗なんだ。雁にはあるみたいなんだ」

淡い薄紅色の花。
確か、延王と延台舗がいた時にちらっと説明してくれただけ。


なんだろう、桜を口実にただ会いたいだけの二人の顔が目に浮かぶ。


前言撤回。
女たらしじゃなくて、
人間たらし、なのよね。


祥瓊は、本日二度目の深い溜め息をついた。


END


愛されてるから、
まぁ、いいか。





 

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