延王×陽子

□黒き衣を身に纏い
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「慶の女王は凛々しくあらせられる」

官服姿の王を見て、
薄い笑みを浮かべて
さらりと言を発したのは
同じ位簡素な服を着た
雁国の王だった。

その凛々しい慶の女王、陽子は眉をひそめた。

決して褒められたのではない。
厭味を言われたのだ。

「貴方にだけは言われる筋合いはございません」

「俺は官服では無い。簡素なだけだ、まるで違う。」
子供の様な言い訳に
呆れたように溜息。

「王が着る服ではございませんでしょう。」


「お主も王だろうが」

「少なくともここは私の国ですから私の好きな格好にさせていただきます」


「ほぅ。…では他国なら違うと言うことだな?」



しまった、と思った時にはもう遅かった。

ニヤりと
隣国の王が
こちらをみて勝ち誇ったように笑う。


「実は来月貴国の王を我が雁国にお招きしたいと存ずる」


「ついては盛装をして…「延王っ!!卑怯ですよっ」
「うちは格式張るのが好きでな」

「延…っ!!」

「しかも女王となれば華やかに着飾るのが慣例」

「…っ!!」

「思う存分に飾ってくるがいい」

口を挟む余地もない。
ぐぅの音も出ないとはこのことだ。


初めから
こうなる様に計算済み。



頭の良い人って
「だから嫌い…」


「俺は気に入ってるぞ。盛装姿も。」


噛み合ってるようで
噛み合わない会話。

全部分かってるくせに。
「そういう意味で言ったのではありません」


「俺はそのままの意味だぞ。」

その瞬間
頬を掠めた唇の感触。

「〜〜〜〜〜〜っ!
帰れーーー!!」


言った私が全速力だしっ



いつか見てろ、延王っ!!
そう心の中で絶叫した。




END


ぽつりと大の大人が一人部屋に残されて
苦笑する。

さて、帰るとするか


来月来る貴人を
思い浮かべながら
悠々と男は宮を後にした。





 

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