僕<彼女
□T
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「また、朝が来た」
ぽつりと僕は病院の床にそれを吐き捨てた。
窓から見える朝日は気持ち悪いほど綺麗に輝いていて、キラキラを世界を輝かせている。
朝は嫌いだ。
あの光が怖い、怖い、怖い。
僕の存在だけくっきり映すような、あの光が怖い。
繰り返すこの毎日に憂鬱していた僕。
人間不信で不登校とか精神病とかそんなんでは無かったと思うけど。
人の笑顔も、泣き顔も、声も、音も、全て全て全て全て。
大嫌いだった。
いつからそんなことを思うようになったかは覚えていない。
ただ、母が死んで、父が死んで、兄弟が死んで、僕だけしか生き残らなかったあの時を境目にして僕の人生は確実に違う道をたどっていた。
死んでやろう、と思った。
17歳の誕生日。今日。
別に心残りも何もない。
何も、残っていない。
僕の心はそんなちっぽけなモノなんだ。
嘲笑うように心に言葉を投げつけて、心臓の鼓動を遅くした。元から早い訳でもないけど。
一段ずつ上がって行った階段には何も感じなかった。
僕の人生はそれくらいだったんだよ、自分で何かに語りかける。
屋上に出た。
風が、気持ち良かった。
別に初めて来たわけでも無かったけど、何か新しい感情が芽生えた。
心地よい、暖かさ。
風の音を聞きながら2秒、呼吸を止めた。
そして、僕はフェンスに手をかけた。
飛び降りようと、反対側に出た。その時。
「待って下さい」
後ろから…微かなソプラノが聞こえた。
立っていたのは僕よりもかなり幼い少女。
真っ白なフリルのついた、真っ白なワンピースを見に纏い、僕をしっかりと見据えていた。
「死なないで、下さい」
僕は、死ななかった。
たった一人の少女の言葉にいとも簡単に踊らされたのだ。
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