僕<彼女

□U
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僕は、地面に再び足を下ろす道を選択した。

甘えたくないから、この目の前に居る少女に質問してから死のう、という理由をつけて。



僕は甘えた。









「なんでいきなりあった君にそんなこと言われなくちゃいけないのかい?」



僕は、多分殺気立った声(演技)で言った。


太陽がそろそろ熱くなって髪がジリジリした。

だけど風がちょうどいいように僕の体内温度を飽和してくれていた。









「貴方はまだ死なないからです。だから死なないでください」


「…意味分からないね」




意味深な発言をされて少し動揺…したかも。

少女は真顔を崩さずそのまま立ち尽くした。





「意味は分からなくてもいいです」


「…」


一瞬、明るい笑顔になる。

僕が死なないと、察知されたのかとおおよそ予測。



コイツ、何歳だよ。








「ところで、ここは…病院ですね?」


話題が変わる。

きょろきょろあたりを見わたすその姿は、何処にでもいる子供。



だけど、その言動が幼さをかき消している。




「そうだけど…?」



僕がそう言葉を漏らす。




「こんなの、昔は無かったな」



「??」







疑問符を並べる。

僕の様子を見て少女はハッとしたように前を向いた。



「え、いや…なんでもないです、気にしないで」




そう言い、僕に一歩近づいた。

そして息を漏らし、




「ここで会ったのも、何かの縁でしょう。…私の名前は小崎葎(オザキリツ)。一応…7歳です」


「聞いてないけど、名前なんて」



それが僕の言葉。

明らかにさっきの事から話題変えてるだけじゃん。



そこは子供なのか、大人なのか分からないな。







「ここらへんに住んでる子じゃないんだね?」

最近、この病院が出来たからって。この町の住人がこの病院を知らない筈ないし。



そう言うと彼女は一瞬…目を伏せた。





「おじさんがここに住んでいるんです。今日は遊びに来たんですよ」


(…病院に??)



僕の中にはとりあえず疑問符が連続で浮かび続ける。

もっと娯楽の所に行かないのかよ。




そんなことを思っていたら。

刹那、彼女の声。


「では…私はこれで…、貴方はもう死なないようですし」





そう言って、僕の返事なんて待たずにドアの向こうへと消えて行った。

不思議な子だ、僕は心の中で言った。





全く、まだ死なないなんて言ってないじゃないか。








そういえば。



そうだよ。









あの子の名前。






何処かで聞いたことがあるのは気のせいなのか??

いや、でも耳にした覚えは…あるかな?




凄く昔、聞いたことあるような無いような。





小崎、葎。










――――――――――――――――――


―――――――













ドサッ――――――――――







「ぱ、ぱ…?ま、まぁ…????」





わたしの目の前には、パパとママが赤いものをたらたらと流してたおれた。

ママがわたしの方を見て口をうごかした。


でも、なんて言ってるか分かんないよ。

ママ、ねちゃうの??


まだ…おやつのじかんにもなってないよ?









ほうちょうを持った知らないおじさんはいきなりわらいだした。





「……っ…はっ…ははははははははっ…あ――――――――――――っははっは!!!!!!!!!」




なにかわけのわからないことばさけんだ。



そして、ちかくにいたわたしに目をむけた。


こわいよ、ぱぱ、まま。

わたし、が、しん、じゃうよ。




いやだよ。





あしたは、えんそくだから、にもつのじゅんび、し、なきゃ。


ねぇねぇ、なんでおじさんわらってるの。



なんでわたしに「それ」むけてるの?












なんで「それ」、わたしにふりあげてるの???









!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!







わたしは、……












つぎのひ。

わたしとぱぱとままの名前はテレビでスーツをきたひとに読まれていた。




だってここにはすごいびょういんなんてぜんぜんなくて。


だれもだれもだれもだれもだれもだれもだれもだれもたすけてくれなくて。










けっきょく、しんじゃったんだもーんってニュースで言ってた。


























ついでに言うと、今はあの日から10年位経っています。


久しぶりに吸ったここの町の空気はとっても濁っていました。

















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