BOOK

□空色
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辺りに転がる屍を無感動に見つめながら、雲雀はトンファーを奮った。


狩りをしている最中にも脳裏に浮かぶ、小動物の顔。


『雲雀さんっ!』




ああ、まただ。
最近しょっちゅうあの笑顔が浮かぶ。

自分を恐れずに近付いてくる、草食動物の皮を被った小動物。



『ひ・・・雲雀・・・さん・・・っ』



ああもう。
狩りに集中できない。


とりあえずこの気持ちを群れにぶつけた。
















空色














「あれ?雲雀さん?」



屋上で昼寝をしていたら、キィ、と音が鳴った。

誰、邪魔したら咬み殺す。
そんな物騒なことを考えながら入口を見れば、群れを咬み殺している時にも頭に浮かぶ顔が。


「・・・沢田か」



ふぁ、と欠伸をしながら寝る体勢に戻る。
そしたら小動物が隣に座った。


「・・・何」


ちょっと冷たく言っても、えへへ、と笑うだけ。

咬み殺さないことに自分でも驚く。



また寝ようとしたら、突然沢田が乗っかってきた。
自分の腕を枕にしていたから、腕ごと押し付けられる。



「ちょっと、何これ」


沢田をどかしてトンファーを出そうとするも、案外力が強くてどかせられない。

「どきなよ」


睨んでも効果なし。


「知ってました?オレ、腕の力は結構強いんです」


ハイパーモードで戦ううちに力ついちゃって。
笑う沢田に、眉をしかめる。


「いいからどきなよ。咬み殺されたいの?」


ぐいぐいと退かそうとしても、逆に顔が迫ってくる。


あと10cm、といったところでピタリと止まった。


「散々アタックしても全然気付かないし、もう最終手段しかないかなって」


にこり。


そんな効果音が付きそうな素晴らしい笑顔の次の瞬間には、唇に柔らかいものが触れていた。



一瞬だけ触れたキス。
雲雀は何が起こっているのかわからなかった。
しかし、理解した瞬間、全身の血が沸騰したような錯覚に陥る。



「な・・・」
「好きなんですよ、雲雀さん」


貴方が、好きなんです。
これでわからなかったら、諦めますから。



そうとだけ言って、立ち上がる。
さっさと屋上から出ていくツナに、雲雀は顔が熱くなるのを感じた。




「わからないわけ、ないだろ・・・」


反射的に口元を手で覆う。
チャイムの音も聞こえないほど、雲雀は呆然としていた。
















――――――――

あれ、ツナ雲じゃんこれ。

とにかくEND。

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