BOOK

□大空は大空でしかいられない
1ページ/1ページ





―――お前は、大空なんだ



天候は大空を捨てるんだ?



―――一生ついていきます!



一生・・・短かったな




―――親友だろ?



裏切るのが親友なの?







「もう・・・いいや」



屋上の、フェンスの外側。
一歩間違えば、確実に転落死する高さ。



ひゅう、と吹いた風が綱吉の髪を扇ぐ。

彼の体は、満身創痍だった。
どれもこれも、ある一人の転校生のせい。

友達は裏切り、彼を傷付けた。




―――もう、限界だった。



「・・・よくやったよな、あんだけやられてまだ生きてんだから」



それも、今日で終わり。

遺書には真実を書いた。
もう、苦しみから解き放たれる。


そう思うと、晴れやかだった。





「さよなら、現実世界」




とん。




軽い音を立てて、彼の体は浮いた。









数瞬後、頭からコンクリに突っ込み、14年の人生が終わった。














「・・・ん?」


ぱちぱち。
死んだはずの自分。
だが、今、何故か豪華な寝室らしき所にいた。




自分が寝ていた?のは、フカフカのベッドらしい。



がばりと起き上がり、回りを見渡す。



ベッドしかない。
でも、ベッドが無駄に豪華だった。




ガチャリと音がした。
音源に振り向くと、顔にタトゥーをした、ポニテの女性が。


(・・・どっかで見た・・・)



記憶を辿っていると、何やら女性が後ろに向かって叫んでいる。



「一世〜!十世起きましたよー」



「・・・は?」


え、一世?
てことは、ここリングの中?
あれ、三柴に奪われたよな?




綱吉が混乱していると、女性・・・ダニエラに代わり、金髪の跳ね跳ねヘアーの男が入ってきた。




『びっくりしたぞ、綱吉。いきなりこっちに来たからな』
「えっと・・・」
『ここはリング内だ。安心しろ。体は壊れたからな、あまりに早いが、我々の仲間入りだ』
「っオレ!死んだんですよね!?あいつらは・・・っ」
『大丈夫だ。あの裏切り者共なら、真実知った瞬間泣き崩れて謝っていた。三柴とかいう小娘も、思いっきり拒絶してやる』
「そ・・・ですか」




いい気味だ。
少し、安心した。




―――と、シリアスな雰囲気を払うように、ふいに一世・・・ジョットが明るい声で言った。




『綱吉、クッキー食べるか?』
「は?」
『美味しいクッキーと紅茶があるぞ。向こうで皆で食べよう』
「は・・・はぁ・・・」




思念体ってモノ食えんのか。




パジャマらしき服で、一世に促されるままに寝室を出ると、そこには―――






「・・・」
『おぉ、十世!継承の時以来だな』
『しかし、全く身長変わらんな』
『一世も小さめなのに、更に小さいな』
『しかしまぁ、ホントそっくりだな』



歴代のボスさん方が、紅茶飲みながらチーズケーキやらショートケーキやらをもきゅもきゅしていた。


テーブルに椅子、ティーセット棚に簡易キッチン。




「・・・リングの中ですよね?」



綱吉が問いたくなるのも無理はない。
死んでるはずなのに、生きてる人間そのものだ。



『綱吉はクッキー、バニラとショコラ、ストロベリーどれにしようか?ケーキはチーズケーキとイチゴショート、チョコレートがあるぞ』
「え、あ・・・じゃあバニラクッキーで・・・」



もう訳がわからない。






だが、とにもかくにも、綱吉の死後リング生活が幕を開けたのだった。






「・・・意外と快適」





END
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ