BOOK
□沢田歯科
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東京の端っこ、閑静な住宅街にその歯科医院はある。
先生も助手も可愛い。先生は男だが可愛い。そして臨時の先生もイケメン揃い。
しかも治療は素早く的確。
今日もその医院―――『沢田歯科医院』に、歯磨きをサボったせいで虫歯になってしまった、痛みに泣きそうな患者が入っていった。
ウイィィィーン
自動ドアが開き、すぐに目に入るのは白い下駄箱…というかスリッパ箱。
「こんにちは。また虫歯になっちゃったんですか?」
「あー、はい…めちゃくちゃ痛いっス」
「あら、じゃあ神経までいっちゃってるね」
受付の女性に診察券を渡して周りを見れば、ちょうど空いてる時間帯なのか、女の子が一人とその母親らしき人が。
「はい、じゃあ痛み止め打ちますから、、座ってください」
「うい」
ここの痛み止めは特殊だ。
かなり特殊だ。
「痛いのどこですか?」
「左下の奥歯でふ」
「はい、うちますよー」
3秒ほど口を開いていれば、あっという間に痛みが引く。
注射のはずなのに痛みはないし、何か液体をかけているにしては滲みない。
痛くなければなんでもいいから突っ込まないが。
「どうも」
「ツナ君、宮野さん来たよ」
「はーい、あと2分待っててくださーい」
…さて、これまでの会話からわかるように、彼―――宮野は、ここの常連だった。
そりゃもう毎年。
あんだけ痛い思いしてんのにまだ懲りないのかっつー話だが。
「お待たせしました、宮野さんどうぞ」
受付の隣のドアが開き、沢田歯科の院長が顔を出した。
見た目はそう見えないが、医大を首席で卒業したらしい。
茶髪があちこちに跳ねた、サイヤ人ヘアー。
「じゃあ二番目の席にお願いします。ハル」
「はひ」
「補助お願いね」
「はいっ!
・・・さて、ここからが本題だ。
実は、この医院は治療にあまり電気器具を使わない。
え?どうやって治療するかって?
見てりゃわかる。