稲妻
□そんなものに
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歓声が響く大きなスタジアムの中で、私は無言で観客席からサッカーの試合を見る。
……サッカーなんてどうでも良いんだけど、
それはイタリア代表対日本代表の試合で、
どちらを応援する、といったことはせずにフィールドを見下ろす。
久しぶりの再会がこんなんだって、笑ってしまう。
自分がどれだけ無力か思い知らせたけれど。
それとは反対に白い流星はフィールドで輝き続けている。
幼いころの思い出を胸に私は海を越えて来たの、分かるかな私の気持ち。
言えたら苦労しないわ。
ゴールを決めた彼はスタンドに手を振り喜んでいる。
私は此処にいるよ、お願い気が付いて。
サッカー……?
私は…私はね、
そんなものに惹かれて此処にいるわけじゃない。
フィディオ、貴方に会いに来た。
ねぇ、覚えてる?
………貴方のことが大好きな私のことを。
勿論、忘れたなんて言わせないけど。