novel
□もしも商品化されていたら〜プリンスプリン〜
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赤碕選手が口を開く。
「今日、プ、プリンスプリンの発売日だよな?おいてるか?」
買いに来るのが恥ずかしくて仕方がないという風に目をそらして頭をかいている。
どうして、と頭の片隅で思いながらも、これも商売と割り切って笑顔をつくる。
「ええ、おいてますよ。ブロマイド付きの。」
赤碕選手は一瞬顔を輝かせ、すぐにもとの仏頂面に戻った。
そして口を開き、やはり恥ずかしそうに、言った。
「ひとつ、もらう。」
そして、代金をもらい、商品を包んで渡す。
そこで取引成立、お互い後腐れもなく、全くの他人に戻り、別れる瞬間。
いつもほんの少しの寂寥感を感じるその一瞬を遮る、第三者の声がした。
「やぁ、ザッキー。こんなところで何してるんだい?」
「…っ!王子!何でいるんスか…!」
…紛れもない、ジーノ本人だった。
「いや、起きてみたら隣に君がいなかったんでね。トレーニングならいつも書き置きを残すじゃないか。まぁ昨日あれだけ愛し合ったんだし、トレーニングにいける体力は残ってないだろうけどn「何言ってんスかあんたは!人前で!」
ジーノはそこで初めて自分の存在に気付いたらしい。
きれいな顔がみるみる歪み般若のような恐ろしさになっていく。
「キミ、このことを誰かに言ったらキミの家族共々社会的に抹殺してあげるからそう思え。」
これには頷くしかない。自分には妻子がいるのだ。命は惜しい。
自分の態度を了承ととったジーノは途端にいつもの笑顔になり、もうそこには自分などいないかのように赤碕選手に話し掛ける。
「さぁザッキー帰ろうか。お腹が空いてきたな。朝ご飯がまだだったからね。帰って一緒に作ろう。ところで何を買ったんだい?」
赤碕選手はチラッとこちらを申し訳なさそうに見てすぐに視線をジーノへと戻した。
「あ、いえ…何もないス。」
「あ、もしかしてボクのブロマイド入りのプリンかな。」
「!?な、何で知ってんスか!ま、まさか見てた…!」
「見てないけど、その様子だと当たりみたいだね。そんなものわざわざ買わなくてもプライベートな写真いくらでもあげるのに。」
「え、いやだって王子のユニフォームいつも見てるけど写真ないし……」
「そうだ、今度二人で写真を撮ろう。知り合いに写真家がいるんだ。それでね………」
だんだん遠ざかっていく声。
よかった。安堵して息をもらす。これは人に言いさえしなければどうということはない。
そう、自分さえ言わなければ…
→Nextあとがき。