短編

□古典的感性
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いつか漢詩を習った時に聞いた。

昔の人たちは月を見ると、大切な人のことを思い出したという。


この美しく輝く満月を見て、そんな話を思い出した。

そんな話を思い出して、キミのことを思い出した。



「悪くない」



月を見て、キミを思い浮かべるのも悪くない。


キミはどう思うだろう。


もしキミがその話を知っていたとして、僕がキミを思い浮かべたように、キミも僕を思い浮かべてくれるだろうか。



なんてベタなとキミは笑うかもしれない。

でも、僕は何だかアリな気がする。


それはきっと、満月の輝きの優しさと、キミの笑顔の優しさとが重なってしまったから。


それから何だか月の光を感じると、キミが寄り添ってくれているような気がして。



「あぁ、悪くないな」



あぁ、何故僕がキミに弱いのか分かったよ。



僕が弱いんじゃなくて、月のように優しいキミが、特別なだけ。






『月→キミ』の連鎖には、一つだけ問題がある。



月を見るとどうしようもなく、キミに会いたくなるということ。






目を細めて月を窺うと、そっと手を伸ばしてみた。


小さくキミの名を口にしてみても、当然応答はあるはずもなく。




それでもキミに会えない日は、月に其の笑顔を見る。







寂しがりな僕は今日も、月を仰ぎキミに想いを馳せる。








end.
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