短編

□惑乱の月
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魔法にでもかかってしまったのだ



君の手が 床についている私の手に





部屋の明りは 月の光だけ




隣に座る君の横顔を盗み見ると、

月に青白く照らされている






月が私に 不適に笑いかけている





君の指が 私の指に絡む






嗚呼、どうすればいいのだろうか

私は動くことができなくなる





見上げて助けを求めるが、

月はただ不適に笑うだけ





君の目が 私の目を捕らえる





嗚呼、もう、逃げられない

私は動くことをやめる






伏せられた君の目が私の唇を捕らえれば、

私はゆっくりと目を閉じる





甘く柔らかく落とされた君の唇のその熱に、

だんだん意識が朦朧としてくる









君の熱に侵されながら、

その肩越しに 月が薄く笑った







やっぱり、貴方のせいね。


貴方の光が、私を惑わせたのか





怪しく、美しく、柔らかな月の光のたち込める中で、


私は君に侵される―









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