恋歌の準備をしよう
□プロローグ
2ページ/3ページ
――――…
曲が終わっても私は、身動きとらなかった。
いやとれなかったと言っていい。
それだけ、この人の曲はすごい。
季節は冬。
私は母に誘われて、今コンサート会場にいる。
別に有名でもない歌手で、名前も知らない人だから行く気はなかったのに、母に強引に連れて来られた。
結果、心の奥まで染みた曲に私は何も出来なかった。
でもなんで――…
恋もしたことない私が、この曲にすごく共感してる…
彼氏できたこともない。
キスもない。
男の子と手つないだのなんか、幼稚園の遠足ぐらい。
そんな私が、共感するなんて…
でもそれは、これから起きることの前兆であった―…
.