作品
□君とぼくの初体験
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※家柄関係なく幼馴染みな2人
今日、私はホロホロの家へ行く。昔は難なく遊びに行けたのに中学生になった今はなんだか照れ臭くて学校でも話さないし、一緒に学校にも行かなくなった。
だから、今日は理由があるからホロホロの家に行く。
それだけ。理由があるから家に行くの!
…理由が無いと行きづらいのもまた事実なわけで
ホロホロがうちに来ることなんて無くなったし、なんだかなぁ
そうこうしているうちにホロホロの家についた
相変わらず大きい、歴史のある家
私はこの家の縁側が特に好きで、たらいいっぱいに冷たい水を張って足を入れて涼んだり、花火を見たり、スイカを食べたり、色んな経験を縁側でした。それもホロホロと一緒に
こういう思い出を思い出すと大人になるのは悲しいことだとつくづく痛感させられる
いけない、用があるんだ
思い出に浸っている自分に渇をいれ、インターホンを押す
「おばさん、ダム子だよー!」
「ダム子ちゃん久しぶり!どしたの?お母さん今いないんだ」
「ピリカちゃん久しぶり。そうなの?んー、じゃあもっかい来るね!」
「お母さんが帰ってくるまでいたら?ゆっくりしていってよ!お兄ちゃんは縁側で寝てるけど…」
「あはは、じゃあお言葉に甘えて」
本当はおばさんに一言伝言を知らせるだけなんだけど、まぁいいかな
「あ!ダム子ちゃん!来ていきなり悪いんだけど、私お使い頼まれてるの!!少し留守番してもらえないかな?」
「いいよー、行ってらっしゃい!」
ピリカちゃんも大きくなったなぁ、可愛くなって、ホロホロも過保護だから彼氏にはうるさいんじゃないかな
ホロホロ…
そういや2人きり?
ちなみにホロホロは私の横で気持ち良さそうにお腹を出して眠っている
「…ホロホロ?」
返事はない。完璧に熟睡しているようだ。
じっくりと見ていると、成長したのがうかがえる。昔とは違う顔立ち、体格、身長、そして中身
私も変わったところがあるから言えないけれど、昔みたいに関わりを持ちたく思う。
でも、男の子は幼馴染みなどという関係にはこだわらない。私にとってはホロホロとの繋がりは幼馴染みであることしかないのに、なんだか見捨てられた気持ち
ホロホロの淡い水色の髪が風になびく。
触れてみたけど目は開かない。
――――少しくらい、いいよね
風鈴がなる
そっと君に近寄る
そうして君との距離は0になる
「…何してんだろ私」
「おい」
止まった
私の中の思考回路がショートした。それと裏腹に冷や汗が止まらない
「ご、ごめんなさい!!こんなことしようとしたわけじゃなくて!ほんとごめんね!じゃあ!」
ホロホロの唇を必死に擦り、早口でまくし立て早足で立ち去った
どうしようどうしよう、今冷静に考えれば寝てたらいいとかの問題じゃなくて
もしかしたら人のファーストキスを奪ってしまったかもしれない。もう、ホロホロに顔向けらんない!!
ああでも、またあの場所で初めてを体験したのね
今度から縁側に行くたび顔が赤くなるのかな
バロメーターの針が一回りした冷静な頭でこんなことを考えていた
君とぼくの初体験
(狸寝入りでした、なんて言えるわけもなく)
(最高の置き土産だと噛み締めた。)
(てかなんで拭くんだよ)