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□世界の終わりに
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「ねぇ、シズちゃん」


「ん?」


「明日、世界が終わるとしたら、シズちゃんは何をする?」



我ながらベタな質問だ、と狩沢は思う。


公園のベンチに黒い服とバーテンダーの服が並んで座っている。


並んで、といっても、二人の間は人一人分の空席があるのだが。



「なんだよ、急に」


「なんとなく」


「……世界の終わりか」


「うん」



静雄は空に向かって、ふぅと煙草の煙を吐き出した。



「好きな奴に、」


「……うん」


「……俺、好きな奴がいんだけどよ」


「そっか」


「そいつに会って、まぁ、気持ちを伝える……とか」



狩沢はマフラーに顔を埋めた。



「……狩沢は?」


「私?」


「おう」


「……私も、好きな人に告白しに行く」


「……そうか」


「……」


「……」


「……あ、雪だ」


「……おぉ」



ひらりと舞う雪を二人は眺めた。ずっと、ずっと。



「あー寒いなぁ」


「雪降ってるしな」


「ねぇねぇ。寒いからさ、手、繋いでもいい?」



なーんてね、と狩沢が言いかける前に、狩沢の手に何かが触れた。
ぴくり、と狩沢の肩が揺れる。
二人の間に繋がれる、二人の手。
狩沢も静雄も何も言わず。
お互いを見合うこともなく。
空から舞い降りてくる雪を見上げ続けた。



「……暖かい」


「……おう」


「暖かいね」



狩沢の二回目の言葉に、静雄は返事を返すことはなかった。




もし、自分に勇気があったなら。



彼女との。



彼との。



距離を埋めることが。



肩を寄せあうことが。



できるはずなのに。





(世界が終わるまで、貴方は誰を想い続けるのですか?)




end



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