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□両隣の幸せ
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「……今日は特別だからな」


「……」


「てめぇ、今度会ったときは覚えてろよ」


「……シズちゃん、そのセリフ三回目」


そういって、臨也は深いため息をついた。



とある公園のベンチに池袋最強と呼ばれる平和島静雄と、静雄の犬猿の仲とでもいうべき折原臨也が座っていた。
お互い会えば一触即発の喧嘩を始める二人が、今日はなぜか同じベンチに、しかもおとなしく座っている。
静雄は今にも爆発してしまいそうな苛立ちをしているが。

「……いつまでこうしてりゃいいんだよ」
「それはこのお姫様に言ってくれないかな」

臨也はそういうと、お互いが同じベンチに座らなければならない状況を作っている人物に視線を送った。
臨也と静雄の間に座る、一人の女性。狩沢絵理華。
狩沢は臨也と静雄に挟まれて、すやすやと寝息をたててぐっすりと寝ていた。

臨也と静雄の手をしっかり握りながら。

「なにがどうしてこういう状況になったんだろうねぇ」
「俺が知るか」

静雄の言葉に、臨也は苦笑いを浮かべる。

「……よく寝てやがる」
「昨日の夜、遅くまでアニメ見てたらしいよ」
「……なんでそんなことてめーが知ってんだよ」
「え?秘密」

臨也が勝ち誇ったように笑えば、静雄は本日最大の苛立ち混じりのため息をついた。

「あー、むしゃくしゃする」
「本当だねぇ」



愛しい彼女を起こさないように。
臨也は狩沢の左手を、静雄は狩沢の右手を優しく握りしめた。



(両隣の幸せ)

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