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□甘えちゃやーよ
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胡坐をかいて座れば、当たり前のように彼女がそこへ腰を掛けてくる。
彼女だけの特等席。
まあ、だからといって特に何かするわけじゃないんだけれど。
彼女は黙々と編み物を始めちゃうし。
そういえば、俺にマフラー作るとか言ってたっけ。
見るのが清々しいほど、彼女の手先の動きは滑らかだ。
器用だなー、と思う。
俺は欠伸を一つしてから、近くにあった雑誌を広げてみた。
床に置いたまま、ページをパラパラ捲っていく。
しばらく雑誌を見ていたら、彼女が俺の方へ寄りかかってきた。
宮地さん、と名前を呼ばれる。
なんだ?と思って見下ろしてみれば、相田は顔を上げていた。
それはもう、可愛くてさ。
んっ、って顔を突き出してきて。
俺は何の躊躇いもなく、彼女の唇にキスを落とす。
満足したのか、彼女はまた視線を手元に向けて編み物を再開させる。
俺も再び雑誌へと目を落とした。
少し経ってから、またしても相田が顔を上げてくる。俺はそんな彼女と唇を重ね合わせる。
すると、彼女はまた編み物をやって、俺は雑誌に目を向けて。
少し経ってから、またしても相田が――――って。
「……おい」
俺の胸元に寄りかかり、顔を上げて目を閉じていた彼女が、俺の呼びかけにきょとんとした顔で丸い瞳を俺に向けてきた。
――ああ、やばい。
「……いい加減にしないと襲うぞ、コラ」
頬が熱い。絶対赤くなってる。
彼女に気付かれないように、彼女の肩に顔を寄せて、ぎゅっと彼女を後ろから抱きしめた。
相田は手元に視線を戻すと、ぼそりと呟く。
「……誘ってたつもりだったんだけどな」
頬と頬が触れる。
どちらの体温か分からないほどに、互いの熱が交じり合った。
「……どうなっても知らねーからな」
ああ、くそ。
可愛いの反則、とか言うけどさ。
そんなの当たり前だっつーの。
end