O-furi
□名前を呼んで
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「ねぇねぇ阿部くん」
声をかけると、隣でごろんと横になっていた阿部くんが顔を上げた。
外は凍えるほど寒いけれど、家の中は暖かい。おまけに窓から差し込んでくる日の光は格別で、日が当たる床に寝転がるとぽかぽかして眠くなってくる。日向ぼっこをしている猫になったようだ。
「いまから私が言うことの真似して」
阿部くんは、はぁ?みたいな顔をしているけれど、私は気にしない。
「あ。ほら、あって言ってよ」
「なんだよ…。あ」
「い」
「い」
「し」
「……し」
「て」
「……て」
「る!」
「…………る」
「あはは〜愛してるかぁ。ありがと阿部くん!」
怒っているのか、照れているのか、それとも呆れているのか、阿部くんはため息をついた。
「じゃあ篠岡」
阿部くんは横になっている私を引き寄せた。すっぽりと、私は阿部くんの体に包まれる。
「オレの言ったこと、真似して言えよ?」
阿部くんはそういって、にやりと笑った。
「き」
「き?」
「す」
「……えっ、す?」
「し」
「……し」
「て」
「……なんか阿部くんがそういう風に言うの、気持ち悪い……キャー!!痛いっ痛いっ、頭グリグリしないでっ!ちゃっちゃんと言います!言うから!てっ!!」
そういうと、阿部くんは手を止めた。阿部くんのグリグリ攻撃から解放されても、まだ頭はジンジンする。
阿部くんは私の顔をのぞき込んだ。