Drrr!!

□空に浮かぶは。
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もう外にいるよ。……うん、うん。あ、本当だ。雨降ってきたね。……あーちょいやばいかも。うん、うん……ごめんね、ありがとう。えっ?大丈夫だってーなんとか耐えてみせるから、渡草っちにゆっくりで大丈夫って伝えて。……だから大丈夫だって言ってるじゃなーい。ドタチンのバカーイケメンー……あははは!はいはい、じゃあ待ってまーす。

私は携帯をぱたんと閉じ、はぁと深いため息をついた。
空を見上げると、空はどんよりと曇っていて、雨がぱらぱらと降ってきている。そして、向こうの空に尋常ではない大きな雲が浮かんでいるのが見えた。

ドタチンたちと一緒にいればよかった。

遊馬っちは急に入った仕事で今日はいない。私はいつものように渡草っちのワゴンに乗っていた。途中で本屋に行きたくなり、本屋に一人降ろしてもらったのだ。そして、いまに至る。

そこら辺ぶらぶらしてるから、用が終わったら連絡しろよ。

ワゴンを降りたときのドタチンの言葉を思い出す。

……ドタチンの言うとおり、雷鳴りそうだなー。

電話越しのドタチンは雷をすごく心配していた。
私もあの大きな雲は雷をもたらす、そんな確信があった。


「……狩沢?」

一人ぼんやりと考え事をしていると聞き覚えのある声が聞こえてきた。
こんなところで声をかけられるとは思わなかった。だから、私はすごく驚いた顔をして振り返ったにちがいない。そこに立っていたバーテンダーの服を着た背の高い人は私を見て、私同様に驚いた顔をしていたから。
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