Drrr!!
□君のいる世界
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「まっさかシズちゃんが奢ってくれるなんて!金欠だったから助かるよー」
運ばれてきたコーヒーと、ホットケーキの上にアイスとチョコソースが乗ったものを嬉しそうにみつめる狩沢を前に俺は正直、どうしたらいいのかわからなかった。
ただ、狩沢の左手に巻かれた包帯にただ目を奪われていた。
君のいる世界
俺がこんな状況に陥っているのは、ちょうど仕事が一段落し、街を歩いていたときのことだった。
たまたま通った道で、俺は視界に入って欲しくない人間を見つけてしまった。折原臨也。そう、ノミ蟲。
なんで池袋に来てんだよとイライラしながら近づいていき、どうしてやろうかと考えていると、俺は気付いた。臨也の隣に狩沢がいることを。
二人が一緒にいるところを初めて見た。珍しい組み合わせ。だからあの二人が仲がいいなんて、知らなかった。
何を話しているのだろうか。臨也と話している狩沢はやけに楽しそうに笑っていた。
胸がチクリと痛んだ。
なぜだろう。
臨也が池袋にいるだけでイライラする。だけど、今日はそれだけじゃない。臨也が狩沢と一緒にいる。ただそれだけのことに、なぜ俺はイライラしているのだろう。
なぜだろう。
考えるのは苦手だ。
どっちにしろ、イライラの原因は臨也なのだ。
あいつをぶん殴りたい。
怒ってるわけじゃない。
イライラしてるだけ。
思いっ切り、ぶん殴りたいだけ。
「いーざーやーくーん」
近くにあった標識を抜き取る。
臨也が俺に気付く。
臨也は狩沢に手を振り、その場から去ろうとする。
「池袋に来るなって言ったよなー!!」
臨也に向かって思い切り標識を投げた。的に当てるダーツのように。
臨也は軽やかに標識をかわす。
「きゃっ!」
小さな悲鳴が聞こえた。
臨也も、臨也を追いかけようとした俺も声の方へ振り返る。
標識が道路に突き刺さっていた。歪な形に変形して。
その横に座り込んでいる狩沢がいた。
「狩沢!」
慌てて狩沢に駆け寄ろうと臨也に背を向けた。俺の背中に臨也が言葉を紡ぐ。
「あーあ。君の暴力は本当いろんな人を傷つけるよねぇ。あの標識、俺が当たればよかったかな」
「てめっ……!!」
「あれれ、早く狩沢に駆け寄らなくていいの?彼女、シズちゃんのせいで怪我したのかもしれないよ?」
握った拳を押さえ込むように振り下ろした。その様子を見て臨也は笑う。
本当に嫌いだ。折原臨也。
俺は狩沢に駆け寄った。