四天レンジャー

□四天レンジャー
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ここに1人の女子大生がいる。
この物語は、その女性を中心として回る愛と正義と、セクハラに耐える物語である。



第一話 四天レンジャー結成!?の巻



大学が終わり欠伸をしながら自宅マンションの部屋の前に着くと、そこには小さな段ボールの中に入った黒髪の大きな青年が。
思わず止めてしまった足をなんとか動かし、目を合わせないように玄関の鍵を開ける。



「ぐぅぅぅうううううう」
「………ぶはっ!!」



まさかの空腹の音に笑ってしまい、青年を見ると、顔を真っ赤にしこちらを見た。



「…よかったら、何か食べ、」
「ありがたい!!!!」



まだ途中なんですけど。などとは言えず扉を開き中へ招く。
21年間生きてきて、初対面の人を家に上げるだなんて生まれて初めてだった私は、恐怖の反面うきうきしていた。
いや、むしろほぼうきうきだった。

家に入り冷蔵庫の中身をチェックすると、適当に集めた野菜と肉でチャーハンを作る。
冷凍してあるご飯を使うので、少し解凍が必要だ。
ちらりとキッチンにある小さなテーブルに座る大きな青年を見る。



「(これは大量に食べる)」



確信を持って今日までストックしてあった冷凍のご飯を解凍した。
家にある一番大きなお皿にチャーハンをよそい、大きな青年の前に置く。
もちろん自分の分も忘れず、更に用意。



「た、食べてよかと?」
「うん。どうぞ」



手を合わせていただきます。と言えば、それに続き大きな青年もいただきます、と小さな声で告げた。
バクバクと大皿からなくなっていくチャーハンを見て水を飲む。
これだけ美味しそうに食べてもらえるのなら、腕を振るった甲斐があるというもの。(炒めただけだけども)
ごちそうさまでした。と手を合わせるころには彼の大皿には何も残っておらず、違う量なのにスピードが同じことに驚いた。
食べるのが早すぎる。健康に悪そうだ。



「命の恩人ばい」
「いや、それほどのものでは。よかったです。お腹が膨れて」
「この恩は忘れん」
「おかまいなく」
「また迎えにくるけん、それまで待っちょって欲しい」
「…はい?」
「今日はこのへんで!」
「え、ちょ、」



手の甲にキスをし、大きな青年は窓から消えた。
いやここ5階なんですけど。
窓に駆け寄り下を覗くと、大きな青年の姿はすでになかった。



「…背が高いと5階なんて屁でもないのか」



先ほどあった出来事を思い出しながら湯船に浸かっていると、激しい物音がし私の目の前に緑と黄色の派手な色遣いのジャージを着た青年が現れた。
え、何これ覗き?いや覗くっていうか壁ブチ破ったし痴漢?
お湯に肩まで浸かり眉間にしわを寄せる。すると私と目の合った青年が親指を立てながら叫んだ。



「危ないとこやったな!」
「今まさに危険にさらされているんですが」



あなたによって。
いくらイケメンであっても、覗きは覗き、痴漢は痴漢である。
チカン、ダメ、ゼッタイ。



「何言うてん。白馬の王子様が迎えに来たんやで」
「お風呂の壁を壊してですか!?」
「そうや!おおっと危ない!」



言うや否や、素早い動きで私の正面の空いてる湯船のスペースに入り込む痴漢。
あなたの行動が危ないんですが。



「ここは危険や!今すぐ俺の家、じゃない俺たちの秘密基地へ!」
「あなたの存在が危険すぎてどうしたらいいか!」
「危険な状況下では恋愛は発展しやすいんやで!!!」
「だからなんだ!」
「俺と子孫を残す行為をしませんか」
「断る」
「ノゥ!」



誰かこの変態を消してください。



「話はああああ後や。とりあえず基地にいいい行くで」
「心の傷が思ったより深いんですね」





「で、ここはどこですか」
「ここは…俺たち四天レンジャーの基地やで!!」
「……厨二病?」
「おー。連れて来たか白石ー」
「オサムちゃん」
「オサムちゃん?」



視線を辿ると、変な帽子を被ったおじさんが。



「もう少しで怪人に連れ去られるとこやったで」
「怪人?」



聞きなれない言葉にクエスチョンマークを出していると、まぁ詳しい話は会議室で。と言われ基地(笑)のなかの会議室と呼ばれる場所へと案内された。
自動で開かれた扉の先には数人の男の子が部屋の中央に置かれている机の周りに集まっていた。



「白石遅いやん」
「すまんすまん。みんなに紹介する子がおんねん」



はい。集まってー。と手を叩くと、面倒臭そうにそれぞれが近付いてくる。



「紹介します。俺の彼女です」
「んなわけあるか!」
「きゃーん。突っ込みのキレがええ感じ☆」
「まぁ小春と俺との方がええ感じ☆やけどな!ハハン!」
「ええと、なんでしたっけここは。あ、新喜劇でしたっけ」
「ちゃうちゃう。ノリはそんな感じやけどな、俺たちはれっきとした正義のヒーローやで!」
「ぶちょ、じゃなかった。隊長、まだ何とどう戦ってるわけやないんで、正義のヒーロー(仮)ですわ」
「おおそやったな。ほな俺たちはれっきとした正義のヒーロー(仮)やで!ってやりにくいわ!!!」



繰り広げられるハイなテンションの会話に眩暈。
あぁ帰って寝たい。そういえば明日の講義って課題出てなかったっけ。あれ、明日だっけ。
現実逃避をし始めた脳内にまた新しい声が後から掛かる。



「遅なって堪忍やでー」
「謙也。お前が遅いなんて珍しいなぁ」
「ちょっと明日の講義に宿題あったか大学まで確認してきててん」
「さすがはスピードスター。速いな!」
「音速やで!って新しい子や。はじめましてー…あ」
「え?あ」



捲し立てるように話す青年の顔に見覚えがあると思えば、同じ大学の同じ講義を受けている子!



「君!えっと…あー…なんやっけ、いつも窓際の定位置におる…」
「なんすか謙也さん。いつもって…ストーカー?キモイっすわ」
「なんでやねん!」
「女にストーキングとかキモイっすわ」
「一氏、それいろいろおかしいで」



誰だっけ、と思いだしていると、ふと浮かんだことば。



「しのびあし」
「へ?あ、いや、それおしたりって読むねん」
「そうそう!友達がしのびあしくんって変わった名前だよねーって言ってたのを思い出したの」
「せやからおしたりやで。間違えんといてな」
「うん。おし、しのびあしくん」
「合うてるのに言い直されたぁぁあああああああ!!!!!?」
「はいはい。うるさいで。ほな最後の一人がそろったところで、色分けすんでー」
「色分け?」



ってなに。



「おん。戦隊モノには色がついてるやろ。それの担当を決めなあかんからな」
「…なんか、結成されるところからって…変な感じ」
「まずレッドやけど。これは隊長の俺がなるべきやな。四天レンジャーレッドの白石蔵之介や」
「…赤なのに白…」
「いっそ四天レンジャーホワイトにしたらええがな」
「謙也はドブ色がええねんな?」
「言うてへんしドブ色とかないし!!!?」
「次、レッドの恋の相手…ピンクやけど、」
「恋の相手?え、何そういうのありなん?」
「これはズバリ黄本さ、」
「はっぁああああい!ここはもちろんアタシの出番よね!四天レンジャーピンク金色小春!レッドの相手はま・か・せ・て!」
「浮気か死なすどぉぉぉおおおおおお!!!!!」



なんだろうこのやりとり。楽しいのかな。あはははは。



「ちょ、待て、ピンクは黄本さんって話し合いしたやないか!」
「アタシは賛成してませーん。それにユウくんも。ね?」
「レッド殺すレッド殺すレッド殺すホワイト殺すレッド殺す」
「あれ、今何か違うものが…」
「え、えーと…」
「そないピンクにこだわらんでも。醜いっすわ。隊長」
「…あかん。涙が出てきたで。こらえられへんわ」
「白石、これで涙を拭くんや」
「おおきに…ってこれわかめやないか!どこでとってきてん!!!」
「大学の帰り道に」
「海沿いにないやろ大学!!!!ああもう突っ込み疲れたわ。小春がピンクな、ピンク」
「嬉しい蔵リーン!」
「抱き付くな小春浮気やぞー!!!!抱き付くなら俺にせええええええええ」



血眼になって両手を広げるヘアバン青年にさすがの私もドン引き。
なに。アレなの。アレなんですか。



「なぁなぁ俺は何色なん?」
「あ?謙也か。計算とはずれたからブルーやな」
「なんの計算がされてたんが気になるけど…。まぁええわかっこええしな!ブルー!」
「しのびあしくんが、」
「おしたりや。忍足謙也。もう謙也って呼んで…」
「わかった。謙也くんがブルーね」
「ユウジはグリーンや」
「グリーン?まった微妙なポジションやな」
「ユウジくんが、」
「ユウジって呼ぶな!!一氏さまと呼べ!」
「お前は何さまやねん」
「最後、イエローが君や」
「私がイエロー…そんなにカレーが大好きってわけじゃないんですけど、」
「いや、そこは求めてへんしやな」
「自分名前なんて言うんやっけ?」
「黄本ひかりです」
「華麗なるするーやな!華麗…カレイ…カレー!?なんということや…ここにお笑いをぶっ込んでくるとは、思わぬ伏兵やで!!!」
「蔵リン落ち着いて」



ふと気になったことが出来た。
そこで口を開かないピアスの青年の色は何色何だろう。



「あの、そこの彼は?」
「え?あぁ。財前光やな。あいつは情報員やから色はないねん」
「ぼっちってやつですわ」
「そういう意味で言うたわけやないがな」
「新手のイジメにあってます。財前光です」
「ちょちょちょ、俺のイメージ悪なるがな」
「大丈夫です。もともとイメージ悪いんで」
「なるほどそれは安心やな。小春、泣きそうや胸貸してくれ」
「ああん大歓迎よー!」
「浮気かー!!!!!死なすどぉぉぉおおおおお!!!!」










(…帰りたい)

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