四天レンジャー

□四天レンジャー
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ここに1人の女子大生がいる。
この物語は、その女性を中心として回る愛と正義と、セクハラに耐える物語である。



第三話 怪人キンタウロス現る!の巻



「黄本さん仕事やで」
「仕事?」



食堂で食べていたアイスに伸ばすスプーンを止める。
ぽかんと口を開けて白石くんを見上げると、指でこめかみを摘まむしぐさを見せる。



「自分、なんでここにおるん」
「白石くんに拉致られて」
「…地球の平和を守るためや!」
「何その間…」
「怪人が暴れとるさかいに、行くで」
「え、ヒーロー的な変身も何も教わってないんだけど!」
「そこは感性でがんば!」
「がんば!じゃねぇよ!!!」






てな感じでみんなの待ち合わせ場所、犬の銅像の前に集合した私たちなわけなんだけども。



「で、敵ってのはどこに?」
「ん?あれや」



指さされた先に視線をやれば、犬の銅像にしがみつく少年。



「あの子?」
「せや。怪人キンタウロスやで」
「……無理矢理感があるように感じるのは私だけじゃないよね。きっと」
「なぁなぁねーちゃん」
「え、わた、私?」



まさか指名をいただくとは。と驚きながら少年に近付こうとすると、白石くんが手で制した。
…ちょ、手が胸に当たってるんですけどていうかにやけるな。
左手で顔面を殴っておく。



「顔は…あかん…っ」
「この犬、食ったらうまいん?」
「うん?…うーん。たぶんまずいと思う。それにばい菌がいっぱいだし、やめておいた方がいいよ」
「そうなんやぁ…。ちゅーかねーちゃん」
「え、」



素早い動きで私の前に移動したキンタウロスはにっこり笑うと、私の手を取り人差し指を甘噛み。



「ねーちゃんは、うまいん?」
「ちょ、」



天真爛漫な表情から一遍。
艶っぽい表情になったキンタウロスは指を舐めながら私の瞳をとらえて離さない。
おおうデンジャラスな匂いがぷんぷんと!



「そこまでや怪人キンタウロス!」



急に腰に手が回されたかと思うと、後ろに引かれた。
背中に衝撃があり振り返ると、全身タイツの青色仮面が。



「あお…青、青、あ、謙也くん」
「しー!名前は伏せなあかんの!」
「ああ、ヒーローものならではの縛りね…」
「縛り言うたらあかん」



いつの間に着替え…じゃない、変身したのか、私以外は全員レンジャーコスチューム。
…小春ちゃん、スカートかわいいよ。



「おいたはここまでやで」
「…自分ら、コスプレ?」



怪人に正論返されてるよー。



「ちゃうわ。地球を守るために生まれた…5人合わせて四天レンジャーや!」
「いーちにーさーんしー…あと一人足りへんで」
「イ、イエローはちょっと野暮用や!」
「(ここにいますけどねー)」
「さぁひかりちゃん、安全なところへ避難しまひょ」
「え、うん」



小春ちゃんに手を引かれその場を離れようとすると、それを目ざとく見つけたキンタウロスが指をさして叫ぶ。



「ワイのひかりに手ぇ出すなぁぁあああああ!!!!」
「キンタウロス…!(きゅん!)」
「いやいや、きゅんて」



思わずきゅんとしてしまった自分の額をぺちんと叩きキンタウロスの方を見ると、みるみる大きくなり、なんとまぁ素敵なイケメ、




「キンちゃんいかん!!!」



キンタウロスの後ろから巨大な何かが現れたかと思うと、羽交い絞めにしてそしてそのまま空に飛んで消えていった。








「なんやったんかしら、あの大きなもの」
「新しい怪人やと思います」



基地に戻り会議室へと移動すると、財前くんがパソコンに向かいながら私たちと会話。
背中向けずにこっち向いて話そうよ、財前くん。



「今までのデータになかったんで、アップデートはしときましたけど」
「とりあえずあの巨大なんとキンタウロスは仲間っちゅう話やな」
「そっすね。その可能性は高いと思います」
「キンちゃんは、」
「キンちゃん?」



私の発言で初めて財前くんがこちらを向いた。



「え、」
「自分、好みやったんやな」
「正直キンタウロスさんのこと…好みやった」
「いや小春さんには言ってな、」
「なんやと浮気か死なすどぉぉぉぉおおおおおお!!!」










(でもイケメンだったなぁ)

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