TALES OF CRIMSON ー本編ー
□第1章 邂逅の兆し
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「うーん!今日もすっごくいい天気だなぁ!」
澄み渡る青空の下、家から出た一人の少女が眩しい太陽を見上げ、気持ち良さそうに手を伸ばしてのびをした。
―…少女の名は、[エル・フラールド]。
透き通った碧(あお)色の長い髪に、エメラルドグリーンの優しい瞳が印象的な、農村に住む村娘である。
エルはここ、ミピェージェ大陸北部に位置する[光葉の村 アウザ]で、祖父と二人で暮らしていた。
エルの祖父はアウザの村長でもあり、酪農が盛んであるこの村で、彼女は動物たちに囲まれながら自然と共に暮らしてきた。
彼女の両親はエルが生まれて間もない頃に事故で亡くなったと、物心がついた頃に祖父から告げられていた。しかし、本人はあまり気にしていない。
全く寂しくはないと言えば嘘になるが、大好きなおじいちゃんと一緒に暮らせているのだから、寂しいという感情はそれ程大きくはなかった。
また、エルは村で唯一魔術を習得している者でもあった。
まだ初級のものしか使えない見習いの身ではあるが、村に隣接する[ハイドラの森]から時々入り込んでくる魔物は、主にエルが退治しており、村人からは頼りになる少女とされていた。
さらに、エルはその持ち前の明るく純粋な性格で、村の誰からも好かれていた。