TALES OF CRIMSON ー本編ー
□第2章 導きの星光
1ページ/16ページ
嵐のように吹き付ける風に打たれながらも、エルは一直線に森へと降り注ぐ白い光に釘付けになっていた。
一体どこから差し込んでいるのかと、エルは光の筋を辿って空を見上げるも、それは遥か上空まで続いており、まるで見当が付かない。
しかし、なぜだかエルにはあの光に既視感があった。
とくんとくんと心臓が高鳴っていくのを感じ、食い入るようにその光をじっと見つめる。
(何だろう…この感じ、前にも―)
あの白い光を見ていると、ずっと胸の奥にしまい込んでいた"何か"を呼び覚ますような感覚がするのだ。
それがどうしてだか分からない事が、エルを余計に混乱させていた。
すると、その光は徐々に細くなっていき、最後にはすうっと音もなく消えていってしまった。
そして、それと同時に激しく吹いていた風も少しずつ収まっていき、ようやくエルは掴まっていた壁から手を離す事が出来た。
しかし風がやんだ後も、しばらくエルはぼんやりとしたまま、その場に立ち尽くしていた。
未だ動悸がする胸を片手で押さえ、出来るだけ冷静になろうと頭の中の整理を始める。