TALES OF CRIMSON ー本編ー
□序章 始まりの前夜
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「ハハッ!さっすがだぜ。よくオレ様の攻撃を防いだなぁ!?」
「…っ…レクス、お前まで来ているのか。」
男の姿を認めて煩わしそうに舌打ちし、紅眼の彼は渾身の力を込めてレクスと呼ばれた刺客の刃を弾き返した。
しかし、それを見越してかレクスは少年の攻撃に合わせて後ろに跳びずさり、木の上に着地してにんまりと不敵な笑みを浮かべた。
その拍子に、男の額にある傷痕が大きく歪む。
少年に斬り掛かった男レクスが装備していた武器は、普通のものではなかった。
"右腕自体"が武器であったのだ。
装着されたガントレットの指先が鋭く尖った爪の形状をしており、強敵を前に爛々と目を輝かせるその様は、血に飢えた猛獣の姿を彷彿させた。
そうしてレクスに足止めを食らっているうちに、二人は完全に敵に包囲されてしまっていた。
「…っ…、無事か?」
「…とりあえず、今は。」
二人は背中合わせになって各々の武器を構え、ひとまず後ろからの攻撃を受けないように陣を取る。
だが、これだけの数の敵を相手にするのなら、それもただの時間稼ぎぐらいにしかならないだろう。
念のため、敵の隙をついて突破できるか目配せしてみたが―…やはり、無理であるようだ。
黒づくめの武装をした集団は、びっしりと隙間なく二人を取り囲んでおり、逆に自分たちに襲い掛かるチャンスを窺っていた。