TALES OF CRIMSON ー本編ー

□第1章 邂逅の兆し
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「おはよう、エルちゃん!」

 すると、牝牛を連れたミルク売りのおばさんが、いつものように笑顔でエルに話し掛けてきた。
 この老婦はエルの近所に住んでおり、彼女の事を小さな頃から可愛がってくれていた人であった。

 そんな彼女にエルも明るく笑い、にこやかに手を振った。


「あ、ティーエおばさん!おはよう。今日もいい天気ですね。」

「ふふふ、エルちゃん、朝から元気いっぱいねぇ。ここのところ、ずっと天気がいいもんだから、洗濯物がすぐに乾いて助かるよ。…あ、そうそう。今日もいつものかい?」

「はい!ミルク一瓶、お願いします。」

 満面の笑みを浮かべ、エルは随分と大きな軽い金属製のガラス瓶をごとんと置いた。
 エルは、毎朝ティーエから搾り立ての牛乳をもらう事を日課にしており、それがエルの毎日の楽しみの一つでもあった。


「はい、分かりましたよ。」

 ティーエは軽く力を入れてエルが持ってきた瓶を受け取ると、連れていた牝牛を繋いでいた綱を引き寄せ、慣れた手つきで乳を搾り始めた。

 その様子を見、エルは好奇に目を輝かせ、しゃがんでそれを眺める。
 自分も前にやった事があるのだが、こんな風に上手く搾る事が出来ないのだ。

 だから、今日もまたティーエの手を見て、そのコツを掴もうとエルは興味津々に学んでいた。


 
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