TALES OF CRIMSON ー本編ー
□第4章 『Who I am?』
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チチチ…
小鳥のさえずる声が聞こえ、少年は重たい瞼(まぶた)をそっと開いた。
途端に刺すような日差しが目に入り、反射的にぎゅっと再び目をつぶる。
…酷く、身体がだるい。
それと何か…長い夢を見ていたような気がする。
しかし、内容はよく思い出せなかった。
もう一度寝てしまおうかと思ったが、せっかく目が覚めたのだからと考え直し、ゆっくりと上体を起こした。
「…っ…!」
その瞬間、脇腹に鋭い痛みが走り、少年は小さく声を上げて咄嗟にその箇所を押さえた。
見ればそこには包帯が巻かれている。
それも脇腹だけでなく、腕や肩など、身体の至る所に巻かれてあった。
「………?」
それを不思議そうな眼差しで見つめた後、今度はふと目線を前に移した。
すると、自分がいるベッドに突っ伏すようにして、誰かが寝ている。
脇腹の激痛やら包帯やらで気を取られ、すっかり気付くのが遅れてしまった。
誰だろうと、少年はそこにいる者の顔を覗き込んでみる。
―…そこにいたのは、透き通るような青い髪を持つ少女だった。
組んだ腕に顔を埋めるようにして、静かに寝息を立てて眠っている。
それが本当に気持ち良さそうだったので。
少年は彼女を起こさないように、しばらく身動きせずにそのままの体勢でいた。
そして、ぼんやりとした表情のまま、少年は首だけを動かして自分がいる部屋を見回した。
(ここ、は……?)
暖かな色彩の家具に、木造の床や壁。
加えて、窓から見える牧歌的で長閑(のど)かな農村風景。
…全く見覚えのない景色だった。
なぜ、自分がこんな所にいるのか分からず、少年はただただ困惑するしかなかった。