小説部屋

□青空と少女
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屋上。青い空。私は何をしているのか?
「はぁ・・・・・・」
屋上の真ん中に寝転がる。風でスカートが翻ってしまうが、今はそんなの気にしない。だって授業中だし。ここには誰も来ない。そんなことよりもだ。
「どうしよ・・・・・・」
手に持つプリントを眺める。そこには「進路希望調査」と書かれている。
行きたい大学も、就きたい職業も、私には何にも無い。ふらふら生きてただけ。ふらふらしてたらいつの間にかこんな所に来てしまった。
適当に大学でも書くか?
本当にそんなことでいいの?
適当に就職希望とでも書くか?
本当にそんなことでいいの?
「ああもう!!」
視界からプリントを取り除く。そんなんで気分は晴れないが視界一杯に広がる青空を見ていると少し楽になった。目一杯の青空。白と青。スカイブルー。


広いなぁ・・・・・・。


それに奇麗だ。
こんな色に飛び込めば私も染めてもらえるのかな?
歩むべき道も何もない私にも色を付けて貰えるのかな?


立ち上がって、緑色のフェンスをよじ登る。

屋上のふち。そこから先に足場はない。まるで今の私みたい。風が涼しい。さっきより風が強く感じられる。向かい風が私の髪を・・・・・・いや、身体を激しく押し戻す。飛び降りてしまう私を止めているよう。
「ふふっ、飛び降りたりなんかしないよ」
飛び降りたら空に行けないじゃんね。
わかってるよ。どうにもなんないもんね。死んだって。でも、どうしたらいいんだろうね。


私の「色」はどこにあるんだろう?


ふちに座って風を感じる。
上を見上げて空を感じる。
無心になって心を感じる。

感じるものは感触。
感じるものは色。
感じるものは?

「まぁ、私みたいにふらふらしている人間には何も無いか」
あははははははは。
あははははは・・・・・・・・・。
ははは・・・・・・。
「ふっ・・・ぐす・・・」
あれ?
「ふえ・・・っ・・・ひっく」
なんで泣いてるんだろ?
「ふぇぇぇぇ・・・・・・」
涙。
ねぇ、心が雨で一杯だよ。
雨のあとは雨?
違うよ?
雨のあとは―――


〜♪


「え?」
今、何か聞こえた。


〜♪〜♪


「音?」
音が聞こえた。
小さい。私の呼吸で消えてしまうくらい。
なんだろう。
きっと、普通の人なら気にならない。それくらい小さな、今にも消えてしまいそうな。そんなちっぽけな音。
「これは歌?」
なぜだろう。わからないけど凄く心から惹かれる音。
「こっちから聞こえるの?」
なんでかわからないけど急がないといけない気がした。走って。走って。
階段を駆け下りて
廊下を走って
辿り着いた。
音楽室。授業で使われない第二音楽室から聞こえてきた。
「良い曲・・・・・・」
今もまだ続いているその曲をただただ聴き続けていたい。でも、それじゃダメなんだよね。
私は
この曲を
歌いたいんだ!


バンッ


思い切りドアを開けた。
そこは―――













「あれから10年かぁ。本当に早いなぁ。あの時、出会わなければ私は本当に駄目になってたかもね・・・・・・」
「もうすぐ時間でーす!スタンバイお願いしまーす!」
「あ、はーい!それじゃ、行って来るね!貴女のおかげで私は自分の色を見つけられたよ!本当にありがとう『ワタシ』!」

New single「青空と少女」
作詞:初音未来
作曲:初音未来
歌:初音未来





「青空と少女」終わり。

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