小説部屋

□空の世界が歌う詩
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何故、世界が出来て。
何故、人間がここに居て。
何故、私はここにいるのか。


そんなことを考えてから、私は生きるのが怖くなった。
空を見上げる。
ただ、綺麗な青空だけがそこに広がっていた。
――私達は自ら望んで生まれたのか。
なにもない。ただ、延々と広がった草原に横たわりながらそんなことを考えてみる。
自ら望んだと仮定したとする。
ならば何故、ここでなくてはならないのか。
何故、記憶がないのだろうか。
そして、
「なんでこんなに怖いのか……」
ぽつり。
自然と口から漏れだす言葉。
風になって飛んで行く。私の言葉は世界中を旅することだろう。
「なに詩人っぽいことを言っているのやら」
一人軽い笑みをこぼす。
空はこんなにも綺麗だというのに。
私はこんなにも汚い。
地面に寝転がっている私を空はどう思っているのだろう。
「私はあなたが羨ましいよ」
きっと、全てがわかれば何も怖くないんだ。何も見えないから、怖い。
人も。
街も。
私も。
何もわからない。
空から見下ろせば見えないものなんか一つもないのに。
「あ……」
でも、そっか。
「孤独なところは同じかもね」
空は一つ。全てがわかる代わりに一人なんだ。
でも、それなら余計に空になりたいかも。
「どっちにしたって、私は孤独なんだから、さ」
空に手を伸ばす。
それは引き寄せて貰う為?それとも私が引き寄せる?
多分、前者。
「だって、引き寄せたら……世界が終わっちゃうもんね」
朝を知らせる太陽も夜を照らす月も延々と広がる青空も永遠に続く星達も。
それが見れなくなるのは嫌だなぁ。
だから引き寄せて貰う。
そしたら、私は全てが見れるんだから。
でも、無理。
それが出来たらとっくにやってる。
こんな怖い場所になんて居ないもの。
慣れるものなんて一つもない。
「さて、行こうか」
私は多分何度でもここに来る。
全てがわかるまでここに来る。
何百年、何千年経ったとしても……。



「空の世界が歌う詩」終わり

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