泡沫の物語
□声音と騎士たる振る舞いと
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「ありがとう。」
ふと立ち寄った街の中を歩いていると、すぐ後ろでそんな声がした。
(この声・・・スザクか?)
その声は自分がよく知っているもので。
ルルーシュは後ろを振り返ろうとした。
「っ!?」
しかし、足元に広がる石畳の僅かな段差につまずいて見事に転倒してしまった。
「大丈夫か?」
心配そうな声と共に手が差し出された。
(スザクか・・・。しかしいつもと少し口調が違う気がするが・・・)
「ああ・・・すまないな・・・」
小さな違和感を感じつつも、ルルーシュはその手を取ろうと顔を上げた。
「スザク・・・じゃない・・・?」
ルルーシュは思わず呆然と呟いた。
(しかしこいつ・・・スザクによく似てるな・・・)
先程の声に白を基調とした服や、ゆるやかなくせっ毛。
そして、騎士であるスザクを彷彿とさせる佇まい。
「・・・えっと、どうかしたのか?」
まじまじと自分を見つめるルルーシュに、彼は不思議そうな表情を浮かべる。
「いや、知り合いによく似たやつがいるのでな。」
「そうか―――。それで、立てそうか?」
「ああ。」
ルルーシュはここでようやく彼の手を取って立ち上がった。
「じゃあ、俺はこれで。」
彼は軽やかに踵を返すとルルーシュからはなれていく。
彼が向かう先に、赤い服を纏った人影がみえた。