〜「情愛華」〜

□〜「蕾」〜
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西国の屋敷・・・

庭園に 牡丹や芍薬の華が 淡い香りを漂わせ 

一輪 また一輪と 咲き始めていた

蜜蜂や蝶蝶は 華の蜜を求め 

小鳥たちも 餌を求めて

様々な生き物たちが 飛び交っていた

時には 伽羅の長い黒髪に止まり

肩に捕まったり 指先に止まったり

まるで会話をしている様である

そんな光景を 側で見ている殺生丸は

「・・・可笑しな生き物だ・・・」と ポツリと呟き

ちょっと機嫌を損ねていた

伽羅はクスッと笑い

「・・・ねぇ・・・殺生丸?・・・」

「・・・何だ・・・」

拗ねている殺生丸の腕に 伽羅は自分の腕を絡み合わせ 腕組をして 甘えてみせた

しかし・・・腕組みも ほんの束の間・・・

一瞬にして 腕組みが解き放され

腰に手を回され 引き寄せられてしまった

口数が少なく 無表情で 無口に近い・・・

冷酷冷淡の殺生丸は 行動あるのみ・・・

相手の話しなど 一切耳を傾けず

云わば 強引過ぎるところもあり

屋敷の者や 他の妖たちからも 怖れられ

誤解される性格ではあるが

伽羅には 心を開き 本音を見せ 種族異りとも

互いに何時しか 恋情を抱き 恋仲になっていた

伽羅はもう一度 殺生丸に甘えながら

「・・・ねぇ・・・殺生丸・・・」

「・・・だから・・・何だと言っておる・・・」と言っておきながら

殺生丸は 伽羅の顔に近づけ 潤んだ瞳に

「・・・フッ・・・」と笑みを溢し 覗き込んだ

恥ずかしげに 殺生丸の頬に 軽い口付けをしてしまった伽羅に ご満悦する殺生丸だが

「・・・もう・・・終わりか?・・・」

不満げに 催促を促す殺生丸・・・

更にもう一度 殺生丸の頬に 口付けをしようとしたその時

殺生丸は 伽羅を抱きしめ 

唇を一瞬にして奪い去り

唇が重なり合ってしまった

優しい 甘い 口付けが 幾度も繰り返され 温かい感触が残る・・・

「・・・伽・・・羅・・・」

「・・・殺・・・生・・・丸・・・」

お互いの名を呼び合いながら 余韻に更け

胸板の厚い 殺生丸の胸で甘え 顔を埋める伽羅に

「・・・腕組みがしたいのであろう?・・・」

殺生丸は 左腕を差し出し 微笑む伽羅は 頷いて 

そっと殺生丸の左腕を取り 腕を絡み合わせた

互いに 笑みを浮かべ 幸せな時が過ぎて行く・・・

時折 伽羅から発する 女特有の匂い・・・

殺生丸の鼻を弄り 脳裏に焼け付く・・・

それがどう言う意味なのか 殺生丸には わかっていた・・・
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