番外編
□僕らの未来が分からない
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ある年。
某進学校にも春は訪れ、俺たちは2年生に進級した。
この学校は中・高・大とエレベーター式になっていて、もちろん途中受験も可能だが、かなり厳しく頭もいるからなかなかそんな生徒はいなかった。
しかし、それがいたのだ。
伊藤開司。
高校受験者だ。
始めの頃は珍しがられていたが、今ではすっかり落ち着いていた。
そんな俺たちの二度目の春のこと。
………
ざわ…ざわ…
「一条…だっけ?また同じクラスだな」
一「…伊藤?」
高校2年生になって初めての日。
クラスはほとんど知らない奴らばかり。うちは学力は高い者しか入れないため、大体同じレベルだから、クラス替えも大きく変わるのだ。
しかしどうした訳だか、去年と同じ顔が後ろの席にいたのだ。
開「ああ、伊藤開司。また前後だ」
一「まあ、一条と伊藤だしな…」
伊藤とは必要最低限の会話ほどしかしたことはない。
なのに俺のことを覚えているなんて。俺も覚えていたけれど。
開「今年もよろしくな」
一「ああ…よろしく」
学力がものを言うこの学校では、友情なんてものはあってないようなものだ。
勉強に差し支えない程度によろしくしてやるよ。
大半の人間がこんな考え。
…自分もその一人だった。
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一「黒崎先生。持ってきました」
黒「ああ、ご苦労だ」
先生のお気に入りに入るのは絶対だし、もちろん一番でなくてはならない。
そんな自分をよく思わない人間はどこへ行ってもいるものだ。
一「…うざったい…」
またどこかへ消えてしまった鞄のことを考えながら席へ着いた。
消えたと言っても、毎回二日後くらいには戻ってきていた。手紙がついて。
幾度とこんなことが起これば探すのも煩わしい。
疲れも手伝って、一人の教室は落ち着いて、そのまま動けなくなった。
不意に廊下側の窓に目をやると、ちょうど通りかかった人物と目が合った。
伊藤開司だった。
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