TOH
□視線恐怖症
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俺が小さい頃。コハクを生んで、母さんはすぐに逝った。
そのせいか、みんなが同情や憐れみの目で俺たちを見ていた。
その視線が、俺は何よりも嫌いだった──。
「ヒスイの前髪って長いよね」
能天気バカが俺の前髪をつかみながら、いつものアホ面で言った。
今日は野宿ではなく、宿屋だ。
それもこれも、ちっこいデカ帽子が疲れて動けないと駄々をこねたからだ。
男三人部屋。クンツァイトはリチアやベリルと買い物に行っている。(疲れたとか言っていたくせに)
そして、広い部屋には二人だけ。
「髪の毛邪魔にならないの?」
「……別にいいだろ。俺の勝手だ」
「ねえ、ヒスイって………視線が怖いとか?」
「はぁ!?んなわけねぇだろ」
「あ、図星?」
「ちげぇよ!!」
「いてっ」
シングは俺が殴った頭を押さえる。
「ったく、何言いやがると思ったら……」
「だってさ、その髪だと目よく見えないし、戦闘中はゴーグルしてるじゃん?」
だからもしかして──と言うアイツは、真っ直ぐに俺の目だけをみてくる。
視線を逸らしてもまだこちらを見ていることがわかった。
「ヒスイの瞳、すごく綺麗なのに勿体ない」
あ、でも俺だけが見れればいいな──と、そう言ったシングの目はいつもと変わらずに澄んだ色で。
少し赤くなった顔を隠すのに長い前髪が使えそうだったから、切るのはしばらくあとになりそうだ。
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お兄ちゃんの前髪と、ゴーグルがそういう理由だったら可愛いと……
頭が末期でごめんなさい