夢の部屋

□心拍数上昇中
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 こんなことってあるんだなって、隣をちらちら見ながら思う。

 どうしよう、出会ってしまった(いや、見てるだけだけど)



「はぁ…」



 ちっちゃい溜め息が聞こえてぴくりと反応してしまう。
 (テ、テレビよりも生の声のがカッコイイ…)



 たまたまひとりで、たまたま入った喫茶店の隣の席に、帽子を被った男の人がいて(イケメンぽくて)


 ちらっと覗いたら にの だった。

 どうしよう、ほんとに。



 FCクラブにも入りたいのに高校になったらね、と言われ我慢している中3のわたし。

 …ま、まさかこんなところで会えるなんて。





 声掛けたいな。
 (迷惑だろうな)

 見つめてたいな。
 (迷惑だろうな)

 きっかけが欲しいな。
 (そんな偶然あるわけない)





ガシャンッ





「あっ! す、…すみません!」



 下を見れば、割れたコップに水で濡れた床。

 バタバタと店員さんがやってきて片付けてくれるけど申し訳なくて、手伝おうとガラスの破片に手を伸ばす。




ぎゅっ




「危ないよ」




「…え?」






 伸ばした手を掴んでたのは、紛れも無くその人で。




「破片、直接触ったら危ないよ。店員さんに任せておきな」



 見上げるとテレビ越しでしか見たことがなかった(ずっと見たかった)にのの優しい顔で。



「…あ、そっそうですね! あの、ありがとうございます」


「いえ」



 にこっと笑って、また開いてた書類やらを見つめ直すにのが、かっこよくて。

 見つめてたら、ふと、にのの寝癖を見付けちゃったりして。




「寝癖…」


 ふっ と目線が合った。


「うそ、寝癖あった?マジかよ…おれ相当恥ずかしいな」



「あっ! でも、大丈夫ですよ! 可愛いですから」


「はっ? 可愛くないよこんな寝癖…」




 わざと頭をわしゃわしゃしながら、照れ臭そうに目を逸らす。



 あぁ、ダメだ。
 今まさに―――…






 拍数上昇中
(名前、なんて言うの?)
(えっ)
(おれは 二宮和也)
(わたしは――…)




 

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