シナリオ部屋
□ゴースト ~1~
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風で木でも吹っ飛んで来たのだろうか。
そんな事を頭で考えながら、櫻井は夢中で階段を駆け降りた。
―…重い。
玄関のドアに手を掛け、開けようとすると、何故かズッシリと重い。
櫻井は少し力を加えてドアを開けた。
目に飛び込んで来たのは
“血を流して倒れている一人の男”だった。
ドアの前に倒れていたせいで、ドアが重かったのだと気付く。
「け、警察…救急車!?」
櫻井は慌てて家に戻り電話を掛けようとした。
…だが、
誰かが櫻井のズボンの裾を掴む。
それも弱々しい力で。
「…ない…で」
「…え?」
櫻井はその弱々しい声がした先へ視線を向ける。
裾を掴んでいたのは、倒れている男だった。
その男は、さらに聞き取れないような小さな声で、櫻井に何かを伝えようとしている。
「…はぁ…、でん…わ、掛けないで…」
息も絶え絶えだった。
櫻井は、手に持っていた受話器を元の場所に置いた。