少年陰陽師

□《そんなの、いらないから》
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部屋に入り文を広げると、お世辞にも上手とは言えない字が並んでいる。



けれど、彼女はそんな昌浩の、のびのびとした字が好きだった。


彼は劣等感を持っているようだが。






文の一番最初には

“遅れてごめん”

の文字。





昌浩らしい、と彰子は笑う。


彼からの文はこの言葉から始まる。



きっと、沢山悩んで書いてくれた。

彼はこういうことが苦手だから。


それを知っているからこそ、返事が返ってくるのが嬉しくて、幸せで。




内容は他愛もない日常の話であった。


そして彰子を案じる言葉も。



何度も何度も読み返してそっと、紙を撫でた。


自然と穏やかな、優しい笑みが零れる。



心が温かさで満たされていく。


まるで、今日の日溜まりのように。
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