少年陰陽師

□《そんなの、いらないから》
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「お帰りなさい、嵬」






涼やかな声で微笑みかけられた鴉の形をしている嵬は、舞い降りて声の主、彰子の下へ来た。


背中に括りつけてあるものを見て彼女は一層、花が咲くように顔を綻ばせる。




それは、心待ちにしていた昌浩からの文だ。





「いつも本当にありがとう、嵬」




背中に括りつけてあったものを取り、御礼を言うと羽を少し広げ、うむと頷く。


それはそれは誇らしげに。



『では、我は姫の下へ参るぞ!』




意気揚々と文字通り飛んでいく嵬の背中を見送って、彰子は自分に割り当てられた部屋へ移動する。



その様は嬉しさと、早く読みたいという気持ちを代弁しているかのように少し早足であった。
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