少年陰陽師
□《変わるもの そして》
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静寂に包まれた、月光が穏やかに降り注ぐ夜。
貴船の澄んだ空間に車輪の音が微かに響く。
ふいにその音が止まると、つかの間の静けさが戻った。
しかし長くは続かず、少し幼さの残る低い声がそれを破る。
「彰子、足元に気をつけてね」
車輪の音を響かせていた車の妖から少年が降りてきた。
そして中にいる人物に手を差し延べて、瞳を細め、笑う。
その手に一回り小さな手が重なった。
「ええ、ありがとう昌浩」
涼やかな声で応えた彰子も車から降りる。
月明かりに照らされた顔を綺麗に微笑ませて。
その微笑みに、少々顔が赤くなっている自覚がない昌浩だったが、幸い暗いので彰子も気づかなかった。
「じゃあ行こうか」
一番最初の約束を果たす為に。
そう言うと、彰子は嬉しそうに頷いた。