Bakuman_

□私はこの気持ちの名前をまだ知らない
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「瑠莉って好きな人いないの?」




「・・わ、私?!」




勢いついてテーブルに置いていたココアを倒しそうになる




「何か、少し気になってさ」




いつもの特等席から見える横顔は何故か何時もの彼じゃないかった





「私は、まぁ・・なんていうか・・その」






ずっと前からサイコーのことが好き。


大好き。







頭の中にポッと浮かんだこの言葉・・でもこんなこと死んでも言えない



この気持ちは私だけが知ってることだった



これまで誰一人に言うことも無かったし



これからも・・きっと・・





「なんだよそれ。あ、あれかシュージンとかか?」



「高木君には彼女いるでしょー!」



だよなー、と笑いながらサイコーはペンを止めた




「じゃぁ、、新妻エイジ」



「え?・・」




新妻さんは私にも優しくしてくれるし 何か可愛くて好きだけど


この気持ちは・・なんだろう


心の中でグラリと何かが崩れ落ちた


でも私はこの気持ちの名前をまだ知らないから



「そっか・・、瑠莉と新妻さんか・・お前も中々凄いひと選ぶな」



「な、何言ってるのよ!!」




あー、もう!この人は・・



ブルル..ブルブル...



「サイコー!携帯鳴ってるよ」



「あ、亜豆だ・・」




薄っすらとサイコーの顔がニヤけるのが分かる




こんな画面もう見慣れちゃったけど



やっぱ何かまだ慣れないでいる私がいて




「嬉そーに笑っちゃってー。もー早く返信してあげなって!」




ホントはこんなこと言いたくないけど



でも大好きな人が精一杯恋してるから



アナタその笑顔が見れるなら


わたしはそれで良いのかもしれない





「わ、わかってるよ!」




「まぁ、言わなくてもサイコーは美保でしょー?」





悪戯っぽく言ったら頭を叩かれた







「それが何か?好きじゃ悪いのかよ・・//」







何時もと違うって



このことなのかな



そう、少しずつアナタはあの子と近づいてる



もう恥ずかしがって「違う」なんて否定することも



こうして照れる顔も辛い顔をするとこも嬉しい顔も悔しくて泣いた顔も



わたしは全部見てきた




あの子の何倍も見てきた



なのに・・・なんで?



どうして私じゃなくてあの子なの



いくら考えても分からない



もし私がもっともっと早くに気持ちを打ち明けたら




アナタは私のこと・・







「ねぇ、サイコー・・」





「・・・?」




わたしね、サイコーのことが好き





言おうとしたはずなのにその口は動かなかった




声が・・でない




「も・・もう許さないんだから」





どうしてこんなに辛いの




ねぇ、何でこんなに涙が溢れてくるの




この気持ちはなんていうの?
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