そのまんま飛躯二次創作
□3.籠の中の鳥
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「俺はお前にとってどういう存在だ?」
そう尋ねる飛影の真剣な眼差しがまぶしくて、躯は視線を外した。
「わけわからんこと聞くな。」
「いいから答えろ。」
彼の気迫に負けて黙り、ためらった。
「・・・おとうと・・・かな・・・。」
他になんて言えた?嘘じゃない。けどまるきり真実ってわけでもない。
なぁ飛影、お前は俺を揺さぶることにかけては天才的だ。
魔界は今日も平和だ。百足の躯軍も毎日淡々とパトロールをこなすだけだった。それが飛影には辛い。自由に生きてきた彼にはこの生活は窮屈だ。
もともと強くなる為に入った躯軍だが、あっという間にナンバー2の座までのし上がった。もはやトップである躯との実力差も大してない。退屈だった。躯軍の連中が彼を妬んで陰口を言うのも、関係ないと思いながらもうんざりしていた。
自由に飢えている自分を感じるが、ここを離れられなかった。
「よう飛影、パトロール報告か?」
あいつの部屋に入ると早速声がかかった。
「今日は10人人間界に返した。」
「ん、ご苦労。」
ここ数ヶ月ずっと、俺達の日々の会話はこれだけだ。あいつはまともに俺の顔を見ようともしない。無関心の表れか。苦痛でしかない一日の勤めを終えて、毎日あいつに会う度軽い失望を覚える。俺はあいつに従う77人の部下の男達のひとりに過ぎない。それがいちばん苦しいのかもしれない。
今日もパトロール報告を終え、部屋を出ようとすると、珍しくあいつに呼び止められた。
「煙鬼が政府軍を作りたがっている。」
「フン・・・くだらんな。」
「お前に頼みたいと俺に打診があった。戦闘には不自由しないはずだぜ。」
「・・・俺は興味ない。」
「強い奴と戦いたいんだろ?絶好の機会じゃないか。」
「興味ないと言ってるだろ。」
躯は渋い顔をして俺を見た。
「・・・お前、ここを出たいんだろ。」
「・・・・。」
「平和にもパトロールにもうんざりだって、顔に書いてあるぜ。」
俺は顔をそむけた。
「とにかく、俺はここを離れる気はない。」
あいつの頬が紅潮し、語気が強まった。
「お前のためだと思って言ってるのがわからないのか!?お前は若くてまだいくらでも伸びる。こんなとこでくすぶっていてどうする!?」
・・・なぜそんな熱くなる?なぜ怒る?俺がどうなろうとお前には関係ないだろ?
「お前の言うことはもっともかもな。俺だって出て行こうと何度も思った。」
「だったら」
「だが俺はここを出る気はない。」
躯は舌打ちし、俺を睨んだ。
「馬鹿かお前は!?何でそうなる!?」
「・・・・。」
「おい。答えろよ。」
答えられるわけがない。プライベートな問題だ。
「・・・何でもいいだろ。」
「良くない。」
「・・・言いたくない。」
「さっさと言え!」
・・・言ってしまってもいいのか・・・。
「おい飛・・・」
「俺はお前がいる所にいたい。」
俺がやっと顔を上げると、躯の顔は真っ赤だった。