そのまんま飛躯二次創作

□5.陽だまり
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 日課の躯へのパトロール報告を終え、飛影は躯の玉座だかベッドだかよくわからないものに腰を落とした。
「・・・って何でそこでくつろいでるんだ。」
 躯に睨まれても全く動じず、飛影は大きく伸びをした。
「今日は奇淋の機嫌がなぜか悪くて参った。」
 能天気につぶやくとあくびをして、今度はゴロンと横になった。
「・・・だから寝るなら自分の部屋にしろ!」
 彼の寝つきの良さと一旦寝てしまうとテコでも起きないのを知っている躯は気が気でならない。
「おい、寝るなよ。」
 揺さぶってみるが既に反応がない。寝つきの良くない躯にはうらやましいくらいの素早さに舌を巻いたが、そう悠長に構えてもいられない。早く追い出さなくては。
「起きろ、飛影。」
 何度も揺さぶってようやく片目をわずかに開けた。
「眠いんだ、寝かせてくれ。」
「ここで寝なくてもいいだろ、自分の部屋行けよ。」
「ここで寝たいんだ、いいだろ。」
 そっぽを向いてまた眠ろうとするのを躯は慌てて止めた。
「駄目だ、早く起きろ。」
 飛影は口をへの字に曲げて躯を見上げた。
「なんで駄目なんだ。」
「何のためにお前の部屋があるんだ、ここは俺の部屋だぞ。」
「ケチケチすんな。」
「・・・クソガキ。」

 飛影はそのまま躯の顔をじっと見上げていたが、突如態勢を変えて躯を押し倒し組み敷いた。
「おい何する!やめろ!!」
 必死で躯がわめき抵抗しようとするのを、飛影は無表情で眺めていた。
「・・・何もしない。するわけないだろ。」
 すぐ躯を放し、また元の場所に倒れこんだ。落ち着き払って素っ気無く言い捨てた。
「だってお前、嫌がってるもんな。」
 躯のほうは核がまだドクドク鳴り続けているし、乱れた呼吸もちっとも収まらない。体中びっしょり汗をかいていた。
「そんな嫌がられたら、出来ない。」
 さらりと言ったきり飛影はしばらく無言で、躯が落ち着くのを待っていた。やがてぽつりとつぶやいた。
「結局、俺じゃ駄目ってことだろ。」
 躯はなんとか徐々に平静を取り戻しつつはあったが、とてもじゃないがまだまともに飛影の顔を見れなかった。
「お前が駄目なんじゃない。俺が女になりたくないんだ。」
「お前、女だろ。」
「違う。」
「おかしな女だ。」
 飛影は躯から目をそらし高い天井を仰いだ。
「・・・それならそれで構わん。お前と一緒にいられればいい。」
 躯はもうたまらなくなって怒鳴った。
「早く出てってくれ。頼むからひとりにしてくれないか。」
「嫌だ。」
 このわがままなガキに本気で腹が立ってきて、殺気すら漂わせ躯は強い口調で言った。
「今すぐ出て行くか、それともこの場で俺に殺されるか、どっちか選べよ。」
 飛影は全く気にしない様子でちらと躯を見た。
「別にお前に殺されても俺はいっこうに構わんが。」
 ゴロリと体を一回転させ、躯の膝の上に頭を置いて目を閉じた。
「もうほんとに寝るから、起こすなよ。」
 不意を打たれて躯はすっかり動揺してしまった。
「お前、真剣に殺すぞ!」
 躯の膝に頭をうずめた飛影は目を閉じたまま、面倒くさそうに答えた。
「俺だって我慢してやってるんだ。このくらいいいだろ。」
 ・・・一体なんでこいつこんな偉そうなんだ。なんで俺は何も言い返せないんだ。穏やかで規則的な寝息を聞きながら、躯はため息をついた。

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