美男子探偵蔵馬シリーズ(ミステリ)

□クソ豚殺人事件 後編 <美男子探偵蔵馬3>
1ページ/6ページ

「躯。開けろ。」
 客室に閉じこもった躯に、ドア越しに飛影は声をかけたが、返事はなかった。
「どうしても開けないならこのドアぶち壊して押し入るからな。」
 飛影がそう言うと躯はやっとドアを開けた。涙に濡れた顔で無言で一瞬目を合わせたかと思うと、すぐに背を向けて床に座り込んでしまった。飛影は黙って部屋に入り、後手でドアを閉めた。
「・・・お前には知られたくなかった。」
 躯は小声でポツリとつぶやいた。飛影はしゃがみこんで、じっと躯の背中を見つめていた。
「俺のこと、汚らわしい女だと軽蔑するか?それとも哀れな女だと同情するか?」
 背を向けたまま震える声で尋ねる躯に、飛影は真剣な目でささやいた。
「・・・どちらでもない。ただ、一緒にいたい。・・・いいだろ?」

「なんで昨日と同じ服なんですか?」
 翌朝、探偵事務所に出勤してきた飛影を見て、蔵馬はひきつった顔で苦々しげに尋ねた。
「・・・どうでもいいだろ、そんなこと。」
 構う様子もなく飛影は朝食の準備に取り掛かった。出来る範囲の最高に皮肉な口調で蔵馬は言い募った。
「ずっとあんなに沈んでたくせに、すっかり元気になっちゃって。あなたもこれでようやく大人の仲間入りですね、オメデトウ。」
「おい、からかうな。」
「あ〜やってられないな、もう!!あの時俺が止めてればこうはならなかったのに!!しかしあの状況ではさすがに止められなかったですね!!」
「ちっとは黙っててくれないか、料理できん。」
「こんな時に朝食なんて喉を通りませんよ!!」
 舌打ちして飛影は向き直り、蔵馬を睨んだ。
「前から思ってたが、お前ゲイかなにかなのか?俺が誰と付き合おうとお前には関係ないだろ。」
「ああ、違いますよ。俺は見た目女っぽいからたまに勘違いされますけど。」
「じゃあ、何で・・・」
「決まってるじゃないですか。人の幸せほど見てて不愉快なものはありませんからね!」
 ケロリとした顔で蔵馬はのたまった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ