パラレル飛躯二次創作A

□私が彼を好きにならない11の理由
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 ある日の深夜、自分の部屋で机に向かいながら、躯はうんうんと頭を抱えていた。机の上には一冊のノートが開かれ、彼女は頬杖をついたり天井を見上げて途方に暮れたりやたらペンを回したり、しまいにはページを破いてクシャクシャに丸めゴミ箱に放り投げたりしながら、もう何時間もこうして机にかじりついているのだった。
 爽やかなショートヘアが良く似合う大学4年生の彼女だが、今は試験前の時期ではないし、彼女自身そう勉強熱心なタイプでもない。彼女がこんな長時間集中して勉強することなんて滅多になく、もちろん彼女は今勉強しているわけではなかった。実は今、彼女はある個人的なリストを必死で作っている真っ最中だ。それは人から見たらものすごくつまらない代物に違いないが、彼女にとってはまさに人生をかけた一大事だった。彼女はなかなか身の入らない試験勉強なんかよりはるかに真剣に、そのリスト作りに取り組んでいた。
 リストのうち最初の数項目は比較的簡単に埋まった。だけどそれではまだ十分ではない気がして、彼女はあともういくつかをなんとか捻り出そうと頭を悩ませていた。結局朝までかかり、ようやくその風変わりなリストは完成した。彼女は完成したノートのページを見て満足そうな笑みを浮かべ、しばらくそれにじっと見入っていた。
 そのリストには「私が彼を好きにならない理由」という少々奇妙なタイトルが付けられていた。ずらりと挙げられた項目はなんと11にも上った。彼女はノートを手に取ると、幾分緊張した面持ちで、書き上げたばかりのリストを小声でゆっくりと読み上げた。
「1.私には付き合って1年の優しくて申し分のない彼氏がいる。
 2.彼にもとても可愛くてお似合いの彼女がいる。
 3.彼は3つも私より年下だ。
 4.彼は私より少しだけ背が低い。私だって小柄なほうなのに、彼はあんまりチビすぎる。
 5.目つきが恐い。短気そう。喧嘩早そう。DV男だったりしたら最悪。
 6.どうにも無口すぎる。絶対デートしても会話が弾まなくてつまんない。
 7.他人に興味なさそう。思いやりも気配りもなさそう。優しい男じゃないと私は無理。
 8.絶対貧乏。いつも同じような着古した安物の服着てるから。ケチな男と付き合ってもいいことない。
 9.はっきり言って、私達には接点なし。
 10.男なんて他にたくさんいる。私はすごくモテる。
 11・結局、彼と私じゃ釣り合わない。年齢も外見も多分中身も超ガキ。共通点もひとつもない。相性がいいとはとても思えない。」
 読み終わると彼女は深々とため息をついて、ノートを机の上に置いた。自分でもリストの後ろに行くに従って苦しくなっていっているのがはっきりわかったが、なるべく多くの項目を設けたかったし、まぁ多少の無理は仕方ない。
「私が彼を好きにならない11の理由。・・・これだけいっぱいあれば、もう大丈夫でしょ。」
 彼女は独り言を言って、パタンとノートを閉じ、机の引出しにしまった。ゴロリとベッドに横になると、散々な苦労の末やっと手に入れた安心感のおかげか、あっという間にスヤスヤと深い眠りに落ちた。
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