パラレル飛躯二次創作A

□聾唖天使
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ある激しい雨の降る夜、飛影は珍しく遅くまでなかなか寝付けなかった。普段はどこででもすぐ眠れるのが自慢の彼が、その日に限ってどうもおかしかった。
「今夜の俺はどうかしてるな。」
 飛影はベッドの上で不機嫌につぶやいて、その夜何度目かの寝返りを打った。
 いくら待ってもいっこうに寝られないので、彼はベッドに横たわったまま、ひとり暮らしの部屋の窓越しにぼんやりと夜の空を眺めていた。1時間ほど前から降り始めた雨はますます激しさを増し、ゴロゴロと不気味な音とともに、大きな雷まで落ち始めた。真っ暗な夜空が時折ピカッとドラマティックにまぶしく光る。
「これじゃますます寝られない。」
 彼は眠りにつくのを諦めて、のろのろとベッドから起き上がった。部屋の唯一の大きな窓に近づくと、カーテンを開け、窓枠に肘をついて荒れ狂う空の様子を何気なく見ていた。
 こんな悪天候ではあるが、彼はこのような薄気味悪くグロテスクな夜が決して嫌いではない。血が騒ぐというか、ゾクゾクするスリルがどことなく感じられる。
 雨が降り込んで来るのを覚悟で、彼は窓を大きく開け放った。ひんやりした外の空気に当たることで、憂鬱な気持ちがいくらか晴れ、眠れるようになるのではないかと思った。
 窓を開けると、途端に横殴りの雨が彼の肌に突き刺さってきたが、肌を濡らす冷たい雨を、彼は不思議と心地良く感じた。
 その時だった。間近に迫っていた雷が頭が割れそうに大きな音で頭上に響き、空がビカッ!と一瞬昼の明るさになった。
「まるで地獄だな。」
 彼は雨をかぶって上半身びしょ濡れになりながら、ニヤリと薄い笑みを浮かべた。
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