パラレル飛躯二次創作A

□WHITE DEVIL
1ページ/42ページ

 飛影と雪菜の双子の兄妹が東京から遠く離れた田舎の町に引っ越したのは、中学1年の終わり、春休みに入ってすぐのことだった。不幸な事故によって両親が急死して、ふたりは母方の祖母の家に引き取られることになったのだ。
 いよいよ引越し当日、飛影は両親の死のショックですっかりやつれた表情の妹を気遣いながら、バタバタと急な引越し準備に追われていた。妹の雪菜も周囲に心配かけまいと辛い気持ちを押し隠し、精一杯の作り笑顔で気丈に振舞っていた。
 荷造りや片付け、掃除等で忙しい兄をもっと手伝いたいと雪菜は切実に思っていたものの、兄と違い人望の厚い彼女はクラスメートがひっきりなしに見送りに訪れるため、その対応に追われてなかなかそうもいかなかった。
「ごめんなさい、兄さん。私、友達とおしゃべりして遊んでばかりね。私達ふたりきりなんだから、本当は私はもっと兄さんを手伝わなきゃいけないのに。」
 雪菜が心苦しそうに言うと、飛影は何でもない風に手を振った。
「いや、こんな引越しくらい俺ひとりで十分なんとかなるから、お前は気にするな。俺のほうは見送りに来る奴なんて誰もいないから俺は暇だ、別に構わん。」
「でも・・・。」
「大丈夫だ。」
 何か言いたげな顔をして雪菜が呼ばれた友人達のもとに走って去っていくのを、忙しく働きながら横目で見て、飛影は眉をひそめた。
「・・・クソ、男まで来てやがる。」
 兄とまったく似ていない双子の妹、雪菜は非常に可愛らしい顔立ちで、おっとりした優しい性格も相まって学校の男子生徒達に絶大な人気があった。当然、見送りに来た友人達の中には彼女の熱心なファンの男子生徒が大勢交じっていた。
「雪菜ちゃん、僕絶対手紙書くからね。」
「俺は毎日電話するからさ。」
 彼らの悲痛な叫びに、天然そのものの雪菜はいちいちにこやかな笑顔で丁寧に返事をしている。
「お前ら、雪菜にちょっかい出すと俺が承知せんぞ!」
 見かねて飛影は大声で怒鳴りながら見送り連中の中に割って入り、群がる男子生徒たちを気迫で一気に蹴散らかした。
「クソ、お前もあんなロクでもない男どもに向かってヘラヘラするんじゃない。いちいちあんな奴らの相手してたらそのうち痛い目に遭うぞ。」
「でも私のためにわざわざ見送りに来てくれたのに。」
「そんなのほっとけばいい。」
 フンと鼻を鳴らしてそっぽを向いた飛影は、妹と似ているのは小柄な体つきと小さな鼻と口だけで、あとは鋭い大きな目も、真っ黒の逆立った髪も、血がつながっているとはとても思えないくらいまるで似ていなかった。性格は気性が激しく短気で無愛想、これまた妹とはまったくの正反対だった。

 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ