パラレル飛躯二次創作A

□食人鬼
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 とある東京から車で6時間の場所にある山奥の、夕暮れどき。空はそろそろ暗くなってきたが同時に夏の暑さも和らいで、キャンプ日和のよく晴れたいい天気だった。
「テント張り終わったら、早速メシにしようぜ。俺、もう腹ペコペコだ。」
 テント張り作業の仕上げに取り掛かりながら幽助が言うと、一緒に作業中の桑原もすかさず大きく頷いて同意した。
「俺も。キャンプの楽しみっていったら、やっぱりメシだよなぁ? 俺なんて、正直そのためにこんな不便な山の中までわざわざ来たようなもんだぜ。」
 サラサラの長い黒髪を夕暮れのかすかな風にたなびかせた蔵馬が、男女問わず見る人を惹き付ける女性的で端正な顔立ちにふんわりと優しい微笑を浮かべ、答えた。
「フフ、じゃあそうしましょうか。ベタですけど、カレーでいいですか? その代わり食材にはとことんこだわって、豪華なものを厳選してあります。」
「マジ!? 豪華食材といえば・・・もしや伊勢エビ!?」
「いくらなんでもカレーに伊勢エビはないだろう、桑原。カキならまだわかるけどさ、さすがにエビはないな。俺は絶対に肉がいい! やっぱ男のキャンプは、肉をがっつり腹いっぱい食わなきゃな!」
 思わせぶりな蔵馬の言葉を受け桑原と幽助が大いに盛り上がっているのをよそに、ちょうど3人がテントを張った周りをひとりで少し散策して帰ってきたばかりの飛影は、無邪気な彼らを突き放すようなムッスリと冷たい無表情で口を挟んだ。
「中になにが入ってようが、カレーはカレーだろう。そんなことでいちいちギャーギャー騒ぎやがって、うるさい奴らだ。」
 飛影はその子供のように小柄な体格からは想像できない、男性的な低い声の持ち主だった。ただでさえ冷ややかな台詞がその凄みのある声で発せられると、ますます強烈に皮肉っぽく聞こえてしまう。
「まぁまぁ。そう言わずに、飛影も俺の特製カレー、楽しみにしててくださいよ。」
 にっこりと、蔵馬は誰もが黙る自慢のキラースマイルで飛影に笑いかけた。
「・・・・。」
 苦手の蔵馬に抑え込まれた飛影は、プイと横を向いて黙り込んだ。
 基本的に誰にでも噛み付く性質の飛影だが、この柔らかな物腰に誰にも負けない鉄壁の知性を誇る蔵馬には、いつもかなわない。
「なぁ蔵馬、それで結局どっちなんだ? エビ? 肉?」
 幽助が目を輝かせて蔵馬に答えをせがんだ。
「内緒です。出来上がったら呼びますから、それまで皆さんはそのへんで遊んでてください。」
「オッケー。」
 幽助、桑原、蔵馬、飛影。
 いつも自然と集まっている親友同士の男4人、平和な夏のキャンプの光景だった。 
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