パラレル飛躯二次創作

□手紙
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「12月26日
 躯へ
 お前は女らしくないわけじゃない。確かに髪は短いし色気も可愛げもないし短気で凶暴だが、それ以外はそう悪くないだろう。
 実は俺は昨日まで二日間寝込んでいた。自由なひとり暮らしを満喫して好き勝手やってた罰が当たったらしい。一昨日体調が悪くなり熱が出て仕事を休んだ。家で寝てたら驚いたことにあのバカ上司と同僚達がケーキ持って見舞いにやって来た。ああそういえばクリスマスイブだったのかとやっと思い出した。俺はイベントには全く興味がない。ケーキは事務員の女が焼いたらしい。甘いものは好きじゃないし食欲がなかったから少ししか食べなかったがうまかった。お前はケーキ食べたか?
 薬を飲まされてから、その事務の女が粥を作って置いていった。それでなんとか乗り切って昨日完治して今これを書いている。今日はすっかり元気だ。あいつらのおかげで助かった。感謝している。俺は人に好かれる性質ではないのだが、珍しいこともあるもんだ。
 ああそういえば、その女が「キャバクラ行かないでくれて嬉しい」とか言っていて、なんだかお前のことを思い出した。女というのはみんな同じことを言うんだな。不思議なものだ。
 年末年始は面倒なので戻らないつもりだ。
                                                           飛影 」
「1月1日
 躯へ
 あけましておめでとう。年賀状が手紙というのも変な話だ。というより俺は年賀状なんてほとんど書いたことないけどな。ましてやお前に書いたことなどあるわけがない。今までは隣に行って挨拶するだけだったんだから。
 しかしお前は本当にわからん奴だ。昔からそうだったが、ますます酷くなっている気がする。3日前お前がいきなり訪ねて来て、俺は本当に驚いた。殴られるのかと思って身構えたが、お前は殴らなかった。年末年始暇だから広島観光に来たという。俺に案内しろと言うが当然俺は何も知らないから無理な話だ。お前はなぜか機嫌が悪くて俺はヒヤヒヤした。仕方ないから仕事場を案内しろと言う。それで仕事場である工事現場に連れてったが、どう考えても見て面白いものではない。それから行きつけの定食屋で一緒に飯を食って、そろそろ帰るかと思えば俺の部屋に泊まっていくと言う。さすがに俺も唖然としたが、確かに来てすぐ帰るのもつまらんだろうし疲れもあるだろう。ホテルに泊まるのも金がかかるだろうから仕方なく泊めることにした。
 困ったことに俺は客用布団なんてものは当然用意していない。するとお前は一緒に俺のベッドで寝るからいいと言う。そりゃ確かに俺は体が小さいしお前も細いから、無理すれば一緒に寝られるかもしれない。だけど俺の貧相なベッドは決して大きくはない。あんまり窮屈すぎるだろう。それに何より、男と一緒のベッドに寝て平気なお前の神経を俺は疑った。どこまで女捨ててるんだ。いい加減にしろ。
 正直俺は落ち着かなかったのだが、まぁ俺とお前の間柄だ、今さら何てことはあるまいと開き直ったら意外と普段通り眠れた。なにしろお前も知ってる通り、俺の特技は寝ることだ。どんな場所でもどんな時でもすぐに眠ることが出来る。おかげで朝までぐっすりと安眠した。
 朝になるとお前はもう起きていて、いきなり俺を蹴り飛ばした。そのまま何発も殴られ蹴られ、危うく死にかけた。俺が女を殴らないと知ってて調子に乗りすぎだ。いつかDVで訴えてやる。俺をやたらとガキ呼ばわりしていたが、どうせ自分が枕が変わって寝られなかったのを八つ当たりしてただけなんだろう?せっかく俺の枕を譲ってやったのに、感謝こそすれあんな暴力沙汰を起こすなんて信じられない奴だ。
 お前が怒って出て行った後見たら、朝食と粥が作ってあった。朝食はわかるが、一体なぜ粥なんだ。元気になってまでわざわざ粥を食べる趣味はない。お前は料理上手というわけではないが、その割になかなかうまかった。
 お前はやたら俺の同僚について聞きたがっていたが、そんなこと聞いてどうするんだ。俺はお前の同僚なんて全く興味ないしどうでもいいがな。
 それと病気のときは連絡しろとうるさかったが、それだってどうでもいいことだろ。病気なんてほっときゃ治る。俺が病気になったってお前には関係ない。
 とにかくもう二度と来るな。俺を殺す気か。
                                                           飛影 」

「1月6日
 飛影へ
 遅くなったけど、あけましておめでとう。こないだは殴ったりしてごめん。
 結局お正月も帰って来なかったね。こっちはお客様がいっぱい来ました。
 男の人も来ました。飛影は知らないだろうけど、私はすごくもてます。
 付き合ってくれと言う人も結婚を申し込んでくる人もいます。
 もし私が結婚することになったら、飛影はどうするの?
                                                            躯 」

「1月9日
 躯へ
 あの後大変な目に遭った。今年の初詣は上司と同僚達と行ったのだが、お前のことを聞かれて冷やかされて俺はだいぶ辛い思いをした。お前を仕事場に連れてったとき見られてて、今やすごい噂が飛び交っているらしい。もちろんこんな目に遭うのは初めてじゃない。お前なんかと幼馴染だったが為に、俺は幾度となくこういう経験はしている。男どもは憎悪と嫉妬の目で俺を見るし、女どもはギャーギャーうるさい。こういう時俺がどう対処してるかお前は知ってるか?「ああ、あれは姉だ」、そう言えばいい。お前のが年上で背も高いしお前はいばっていて俺はお前に頭が上がらないから、皆納得する。いつもそれで収まっている。もっとも全く似てないから疑う奴もたまにはいるが、似てない姉弟ってのもいるだろう。
 お前は見かけだけはいいからな。俺は巻き添えに遭っていつも苦労している。なぜ皆こんなにうわべに騙されるんだろう。お前が本当はどんな奴かきっと誰も知らないだろう。
 お前がもてるのを知ってるかって?知らないわけないだろう。年末年始に初詣だ年始の挨拶だと男達が何人も来ることも知ってるさ。そうだな、お前ももういい歳なんだから、結婚するのも悪くないと思うぜ。もちろん式には呼んでくれるよな。俺は音痴だがお前の為なら歌のひとつも歌ってやってもいい。話下手でおまけにあがる性質だが、スピーチだってしてやってもいい。幸せになってくれ。
                                      お前の弟(子分)より 

追伸 手紙読んで気になったのだが、なんだかお前様子が変だ。なにかあったのか? 

追伸 そう言えばお前の連絡先を教えろと同僚達がうるさい。一応断っといたが、もし興味があれば知らせてくれ。結構いい奴らだ。                                            」
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