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□ラプンツェルRE-MIX
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 女の子はラプンツェルと名づけられ、魔女の家で目に入れても痛くないほど大切に可愛がられてすくすくと育った。やはり魔女の目に狂いはなく、彼女はこの世のものとは思われぬほど美しく成長し、光り輝くようだった。
「お前は本当に美しいねぇ。しかし少々ワガママが過ぎるようだよ。私はお前を世界一立派なレディに、聖女に育て上げたいんだ。もっと慎み深くならなければいけないよ。」
 彼女には母親譲りのワガママさが見受けられるので、魔女はしばしばこう言って彼女を戒めた。
「そうかしら。だけど私はこんなにも美しいんですもの、私の願いは何でも聞き届けられるべきだし、みんな私に親切にしなきゃいけないと思うわ。」
 小生意気な表情で手鏡に映る自分をうっとり見つめたまま、その美しすぎる少女は言い返すのだった。
 ラプンツェルは高い塀に囲まれた魔女の家で、学校にも通わされず世間から隔絶されて、とんでもなく世間知らずに育った。このように彼女の存在は世間から注意深く隠されていたにも関わらず、ラプンツェルが12歳になる頃にはその美しさは巷で大変な噂になっていた。
「恐ろしい魔女の家には絶世の美少女が魔女とふたり人目を避けてひっそり暮らしているらしい。」
 このような噂が世の男どもの関心を引かないわけがなく、魔女の家の周りをたくさんの男達がラプンツェル見たさにうろつくようになった。
「これはいけない。何かあやまちがあってからでは遅い。」
 激怒した魔女はラプンツェルを森の中の高い塔のてっぺんの小部屋に閉じ込めてしまった。高々と誇らしげにそびえ立つその立派な塔には入り口も階段もなく、ただ最上階に小さな窓がひとつ、ついているだけだった。
 魔女は毎日昼間にラプンツェルのもとを訪れるのだが、その時魔女は塔の下からこう呼びかけるのだ。
「ラプンツェル、ラプンツェル、お前の髪を垂らしておくれ。」
 それを聞くとラプンツェルは、金色に輝く不気味にやたらめったら長いおさげ髪を窓の鍵に巻きつけて、塔の下へ垂らすことになっていた。魔女は老体にムチ打って、息も切れ切れにそれをつたい上へ登っていた。

 3年後、ラプンツェルは15歳になっていた。彼女はますます美しく光り輝き、そして魔女の努力も虚しく、ますます嫌な女になっていた。塔での暮らしは退屈で仕方なく、また反抗期真っ只中でもあったのでほとほと魔女に嫌気がさし、ことあるごとにしょっちゅう衝突していた。日々の慰めといえば、魔女が毎日持ってきてくれる贅沢な品々、ドレスやお人形、立派な本、きらきら光る宝石類。彼女は欲深く、いくら贅沢しても満足することがなかった。そして暇を持て余すと彼女はいつも鏡に映る自分の美貌に時間を忘れてうっとり見とれるか、さもなければ魔女に教わったいくつかの歌を歌った。彼女は姿かたちが美しいだけでなく、生まれつき大変な美声の持ち主だった。
「おばあさん、私、退屈で退屈でやりきれないの。いっぺんでいいから外に出てみたいわ。こんな所に閉じこめられてうんざりよ。外にはきっと面白いことがたくさんあるんでしょう。私は世界のすべてが知りたいの、私はすべてを手に入れたいのよ。」
 ラプンツェルは度々こうやって不満を漏らすのだが、魔女は、
「外には悪い獣がうじゃうじゃいるんだよ。お前みたいな若くて美しい女の子が外に出たらあっという間に食われちまうよ。」
 こう言ってラプンツェルを脅すのだった。
「そうね、確かに森には恐ろしい狼がたくさんいるんでしょうね。」
 彼女はため息まじりに渋々答えるしかなかった。
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