オリジナル・その他

□ラプンツェルRE-MIX
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 ある時、ひとりの王子が馬乗りの最中偶然に塔のそばを通りかかった。すると塔の上から可愛らしく美しい歌声が聞こえてきて、王子は思わず聞き入ってしまった。
 村に出ると早速王子は村人に塔のこと、美しい歌声のことを尋ねた。すると、
「ああ、あれは魔女によって塔に閉じ込められているうら若い乙女でな、そりゃあもう信じられないくらいの別嬪だって噂だよ。」
 という答えが返ってきて、まだ若く血気盛んな王子は俄然燃え上がってしまい、それから毎日塔に通うようになった。しかし入り口も階段もない塔に押し入ることも出来ず、むなしく娘の歌声に耳を澄ますだけであった。
 そんなある日、やっと王子は魔女が塔によじ登って入る現場を目撃した。
「なるほど、ああやって入るのか。」
 それで王子は魔女の真似をして上に向かい叫んだ。
「ラプンツェル、ラプンツェル、お前の髪を垂らしておくれ。」
 間もなく金色のおさげ髪がするすると降りてきて、王子はそれをつたって塔を登った。
 ラプンツェルは登ってきたのが魔女ではなく王子だったので腰を抜かすほど驚いた。彼女は長年魔女以外の人間に会っていないのはもちろん、実はこの歳で生まれて初めて本物の男性を見たのだった。
「怖がらないで下さい。僕はあなたの歌声に心を動かされてここまで来たのです。」
 王子はいけしゃあしゃあと優しい口調で真面目くさってラプンツェルに話しかけた。実物のラプンツェルは王子の想像を遥かに超える美しさで、プレイボーイな王子は張り切って甘い言葉をよどみなく次々と口にした。延々と続く王子の上っ面の口説き文句に耳を傾けながら、ラプンツェルは冷静に頭を働かせていた。
「これがご本で読んだ男ってものなのかしら。皺くちゃの醜い死にかけ婆さんに比べたらずっと若くて美しくて、よっぽどいいわね。この男、私があんまり美しいから、すっかり私に見とれて天まで舞い上がっている。やっぱり私の美貌に世界はひれ伏すのよ。」
 王子はラプンツェルの反応が薄いので、ついに最強の殺し文句を口にした。
「僕と、結婚して下さい。」
 もちろんこの時代の王族は一夫多妻制で、実はそう重みのある言葉でも何でもないのだが、ラプンツェルはそんなこと知る由もない。彼女は王子をじっと見て計算高く考えた。
「この男と結婚したら私は王妃になるんだわ。この退屈な塔からも脱け出せるし、王国がひとつ丸ごと私の物になるかもしれない。世界はついに私の前にひざまずくわ。」
 それで彼女は王子の手に自分の手を重ね、上目遣いで「はい。」と返事をした。
 これを聞いた途端、王子はラプンツェルをベッドに押し倒し、まだあどけない彼女をたちまち手篭めにしてしまった。
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