パラレル飛躯二次創作A

□悲しみ機械
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「躯、新しいクラスの顔ぶれはどう?」
 授業が終わると数少ない友人のひとりが声をかけてきた。
「どうって何が?」
「男の話に決まってるじゃない。いい感じの人いる?」
 くすくすと笑いながら尋ねられて初めて周囲を見回した。正直うろ覚えだけど知ってる顔が多い気がする。何人かに去年告白された。もちろん全員断っている、今までOKしたことは一度もないから。
「全然。興味ない。」
「それは困るな。あんた今年こそは彼氏作りなよ?あんたがフリーでいるとみんな迷惑だから。」
「なんで?」
「自分の彼氏盗られちゃうんじゃないかってみんなやきもきしてるよ。」
「・・・へぇ。」
 そう言われてもね。どの男もみんな同じに見えるし、どいつもこいつも死ぬほど退屈そう。
 ふとある男に目が止まった。えらくチビな男で、目つきが悪くて、ガキっぽいのになんだか恐い印象で変な感じ。ああ、そういえば、私は去年あの男にも告白されたっけ。今まで完全に忘れてた。確か授業の後いきなり「ちょっと来い。」って腕捕まれて、そこまではまだいいんだけど、校舎裏とかですらなく、普通に廊下脇に連れてかれて、「付き合ってくれ。」で終わりだった。当然人にジロジロ見られているからもう恥ずかしくて、私は「ありえない。」とだけ言い残して走って逃げた。
 あちゃ、その飛影って奴と目が合ってしまった。なんであんなにいつも人を睨みつけるのか不思議で仕方ないけど、多分もともとああいう目なんだろう。恐いので慌てて目を逸らした。

 今日の英語の授業はグループディスカッションで、私はチビの飛影と同じグループだった。しかし驚くほどこういうのが苦手な男だ。英語が駄目なだけでなく話をすること自体が駄目らしく、ちっとも話さない。みんなイライラするか無視するかどっちかになっていた。しかも腹がたつことに、私には特につっけんどんな態度をとる。去年のことをまだ根にもっているんだろうか。あんな乱暴なやり方でOKする女がいるとはとても思えないけど。
 授業の後、何か言ってやらないと気が済まなくて、飛影を呼び止めた。
「あんた、まだ去年のこと恨んでるの?嫌味な態度やめてくれる?うざったいんだけど。」
 飛影は冷たい目で私を睨んだ。
「まさか。お前のことなんてもう何とも思ってない。」
 そのまま行ってしまった。

 飛影にはほんとに腹が立つ。こっちがずっと見てても、ちっとも目が合わない。なんでだろう、同じクラスで長い時間一緒にいるのだから、少しは目が合ってもいいはずなのに。はらわたが煮えくりかえる思いで私があいつをガン見してると、また友人に声をかけられた。
「あんた、本気であんなのがいいわけ?他にいくらでもいい男いるでしょうが。あんたならよりどりみどりでしょ。よりによってあんなの選ばなくてもいいのに。」
「いったい何の話?」
「だからあんた、あの飛影ってチビが好きなんでしょ。」
「まさか。ありえない。」
「じゃ、なんでそんなガン見してんの。」
「・・・ムカつくから?」
 友人は呆れた顔で頭を振って離れていった。私は友人との話の間も、話が終わってからも、一瞬たりとも飛影から目を離さなかった。どうしてだろう、どうしてこんなに目が合わないんだろう。おかしい、おかしすぎる。
 あ、やっと目が合った。あいつはいつにも増して恐い目で私を睨みつけ、席から立ち上がるとまっすぐ私の方へ歩いてきた。
「何なんだよ、お前は。」
「・・・なによ。」
「昨日は因縁つけてきたと思えば今日は一日中睨んできやがって。俺が何かしたか?落ち着かないからやめてくれ。」
「・・・別に睨んでるつもりないけど。」
「じゃあ何なんだよ。」
「・・・さぁ?」
 怒りの形相であいつは席に戻っていった。私は嬉しくてたまらなかった、あいつと話ができて。その後の授業もずっと私はあいつを見ていた。
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