パラレル飛躯二次創作A

□心地よい孤独
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 三年間こうして人間嫌いにぴったりの世捨て人暮らしを満喫してきたが、今になって意外な所でつまずいた。もともとこの店の主だった、近所に住む高齢の祖母が体調を崩した。俺が店をやれるのも祖母のおかげだし、近所に住んでいるし、やはりここは俺が面倒をみなければなるまい。店を頻繁に空けることになるから、嫌々ながら、俺は店番の臨時バイトを頼むことにした。祖母の体が回復するまででいい、それに今は幸い夏休みだから、1ヶ月くらいやってくれる学生バイトはすぐ見つかるだろう。
 店の前にアルバイト募集の張り紙をしたその日に、早速小柄な少年が店を訪ねて来た。大学生というから少年というわけではないのだろうが、チビで幼い顔立ちをしているので19という年齢よりさらに若く見える。パッと見、中学生と言われてもおかしくない。相手を睨みつけるガンたれた大きな目にアンバランスな小さな鼻と口。奴は店の中に入るとしばらくほこりくさい店内を見回してキョロキョロしていたが、やがてまっすぐ俺に向かってきた。レジでゆっくり椅子に座って読書中の俺を、傲慢な眼差しでギロリと見下ろした。
「外の張り紙見て来た。」
 見た目はガキだが声は低くて男らしく、ぶっきらぼうで生意気な話しぶりだった。
「バイト?」
「ああ。」
「わかった。じゃ明日から来てくれ。」
 俺は面倒くさがりだから、まぁこんなもんだ。

 久しぶりに他人と接するのは正直億劫だったが、その飛影という名のガキは俺以上に無口で、仕事を覚えるのも早く、何も手がかからなかった。店にふたりでいても会話は一切なく、奴がいるかいないかすらわからない、俺ひとりのときと全然変わらない。内心身構えていた俺はほっと胸を撫で下ろした。俺達の会話といえば、せいぜい奴が仕事でわからないことを尋ねるときくらい。
「躯、この本はどこに置けばいいか。」
「適当にそのへんに置いとけ。それから俺はひと回りも年上で上司なんだから躯さんと呼べ。あと敬語使え。」
 俺の言うことは無視して奴は本を置いて向こうへ行ってしまった。生意気なガキだが俺とは気が合うというか、気を遣わなくていいからとてもラクだ。
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